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小林税理士
前回までは家賃の計上時期についてお話させていただきました。
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小林税理士
今回は、家賃以外で生ずる収入(敷金、保証金、更新料等)の収入計上時期についてお話させていただきます。

礼金、権利金、更新料

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小林税理士
新たに賃貸借契約を結んだ際にいただく礼金、更地などの貸付の際にいただく権利金、賃貸借契約を更新する際の更新料などについては、通達では以下の扱いとなっています。

所得税基本通達36-6(頭金、権利金等の収入すべき時期)


 不動産等の貸付け(貸付契約の更新及び地上権等の設定その他他人に不動産等を使用させる行為を含む。以下36-7までにおいて同じ。)をしたことに伴い一時に収受する頭金、権利金、名義書換料、更新料等に係る不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、当該貸付けに係る契約に伴い当該貸付けに係る資産の引渡しを要するものについては当該引渡しのあつた日引渡しを要しないものについては当該貸付けに係る契約の効力発生の日によるものとする。ただし、引渡しを要するものについて契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があつたときは、これを認める。

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小林税理士
上記の通達を簡単にまとめると以下のようになります。
礼金、権利金、更新料等の収入計上時期

・資産の引き渡しを要するもの・・・その資産の引き渡しがあった日
                (契約の効力発生日でも可能)

・資産の引き渡しを要しないもの・・・その貸付けに係る契約の効力発生日

礼金

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小林税理士
礼金については、上記通達にあてはめると、礼金は部屋を貸す際にいただくので、部屋の引き渡しがあります。
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小林税理士
ですので、「資産の引き渡しを要するもの」に該当するので、資産(部屋)の引き渡しがあった日か契約の効力発生日のいずれかに収入計上します。
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社長
通帳に入金された日とかじゃダメなのか?
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小林税理士
例えば契約の効力発生日が12/25、部屋の引き渡しが12/27、仲介業者を介してオーナーの通帳に入金があったのが1/4という場合は、年をまたいでしまっているので、この場合は原則通り処理しなければなりません。
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小林税理士
ただ、契約の効力発生日が12/20、部屋の引き渡しが12/22、仲介業者を介してオーナーの通帳に入金があったのが12/25とかでしたら、所得の計算に影響がないので簡便的に入金日に計上しても問題はないかと思います。

権利金

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小林税理士
権利金の場合も、礼金と同様「資産の引き渡しを要するもの」に該当し、資産の引き渡しがあった日か契約の効力発生日に収入計上します。
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小林税理士
ただ、権利金の場合、受取る金額によっては注意が必要です。

譲渡所得になる場合も

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小林税理士
更地を貸し付けて、借主側がその土地に建物などを建てるような契約となっている場合に受け取る権利金は、所得区分そのものが変わってしまう場合があるんです。
権利金が譲渡所得となる場合(建物等の全部の所有を目的とする場合)

権利金の金額 > その土地の更地としての価額×1/2

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社長
土地を貸すだけなのに、何で売ったことになるんだ?
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小林税理士
それを説明すると話が長くなるので、詳しい話は下記の記事をご覧ください。

敷金、保証金

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小林税理士
敷金や保証金は、賃借人の賃貸人に対する債務の担保として支払れるため、受取っても本来は収入金額に計上しないのですが、敷金や保証金の名目で受け取っても返還しない金額がある場合には、その部分は収入となります。

所得税基本通達36-7(返還を要しなくなつた敷金等の収入すべき時期)


 不動産等の貸付けをしたことに伴い敷金、保証金等の名目により収受する金銭等(以下この項において「敷金等」という。)の額のうち、次に掲げる金額は、それぞれ次に掲げる日の属する年分の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入するものとする。
 (1)敷金等のうちに不動産等の貸付期間の経過に関係なく返還を要しないこととたつている部分の金額がある場合における当該返還を要しないこととなつている部分の金額36-6に定める日
 (2)敷金等のうちに不動産等の貸付期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額がある場合における当該返還を要しないこととなる部分の金額当該貸付けに係る契約に定められたところにより当該返還を要しないこととなつた日
 (3)敷金等のうちに不動産等の貸付期間が終了しなければ返還を要しないことが確定しない部分の金額がある場合において、その終了により返還を要しないことが確定した金額当該不動産等の貸付けが終了した日

上記通達の具体例

(1)のケース

例)敷金30万のうち、30%は償却し、残りは契約終了後に返還する契約となっている場合

収入に計上する日とその金額
30万×30%=9万 ←引き渡しがあった日又は契約効力発生日に計上する。
残りの21万(30万-9万)は、収入計上しない。

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小林税理士
上記通達の(1)は、返還しない部分が最初から決まっているのであれば、最初(引き渡し又は契約効力発生日)の段階で収入計上するということです。
(2)のケース

例)敷金30万、貸付期間は3年で
①1年以内の解約の場合・・・全額返還
②2年以内の解約の場合・・・70%返還
③上記以外の解約の場合・・・50%返還 という契約となっている場合

収入に計上する日とその金額
1年経過した日・・・30万×30%=9万を収入計上
2年経過した日・・・30万×(50%-30%)=6万を収入計上

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小林税理士
上記通達の(2)は、1年経過した日の段階で、1年以内の解約ということはなくなるので、返還する金額は最高でも70%ということになるので、30%は1年経過した日に収入計上します。
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小林税理士
次に2年経過した日の段階で、2年以内の解約ということはなくなるので、この時点で返還する金額は最高で50%となるので、敷金の50%から既に収入計上した30%分を差し引いた金額を収入計上します。
(3)のケース

例)敷金30万、貸付期間は3年で
①1年以内の解約の場合・・・50%返還
②2年以内の解約の場合・・・70%返還
③上記以外の解約の場合・・・全額返還 という契約となっている場合

収入に計上する日とその金額
1年以内に解約した場合・・・解約日に敷金の50%を収入計上
2年以内に解約した場合・・・解約日に敷金の30%を収入計上

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小林税理士
上記通達(3)は、上記(2)の逆のパターンです。
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小林税理士
このケースですと、2年超での解約や契約期間満了まで借りていた場合には、敷金を全額返還しなければならないので、実際の解約があるまでは、収入金額が確定しないことになります。
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小林税理士
例えば(2)のように1年経過した段階では、50%返還するということはなくなりますが、70%返還になるのか、全額返還になるのかわかりません。
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小林税理士
なので、返還を要しないことが確定した日(解約日)に収入計上することになります。