今回は、法人税の中間申告制度について

前期実績による中間申告と仮決算による中間申告の違いは?

中間申告をしなかったらどうなる?

前期実績と仮決算のメリット・デメリットは?

などについてご説明させていただきます。

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社長
何か税務署から小さい封筒が送られてきて、中身見たら納付書のようなものが入ってるんだけど、コレなんだ?
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小林税理士
ああこれ、法人税の中間申告の納付書ですよ。
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社長
中間申告って、何だっけ?

法人税の中間申告って?

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小林税理士
法人税の中間申告とは、前期の決算で申告した法人税額が一定額を超える場合には、所定の時期までに中間申告分の法人税を納付しなければならない制度です。
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社長
納付書が来ているということは、俺んとこの会社の前期の法人税が、その一定額を超えてたってことだな。
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小林税理士
ええ、そうゆうことになります。
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社長
その一定額って、いくらなんだ?

対象者は?

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小林税理士
以下の計算で金額が10万円を超える法人が対象となります。
逆に言えば、10万円以下であれば中間申告はする必要がございません。

前期に確定した法人税額÷前事業年度の月数×6

例1)前期の法人税30万円 前事業年度12ヶ月

30万円÷12ヶ月×6=15万円>10万円 ∴中間申告必要

例2)前期の法人税額18万 前事業年度12ヶ月

18万円÷12ヶ月×6=9万円≦10万円 ∴中間申告不要

例3)前期の法人税15万 前事業年度7ヶ月

15万÷7ヶ月×6=128,571円>10万円  ∴中間申告必要

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社長
まあ、普通は去年の法人税の半分が10万円超えてれば対象者になるって考えておけばいいんだな。
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小林税理士
まあ一般的には、そうですね。
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社長
で、いくら納税することになるんだ?

いくら納税するの?

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小林税理士
基本的には、納税義務者の判定と同じ方法で計算した金額となります。

前期に確定した法人税額÷前事業年度の月数×6

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小林税理士
これをちなみに、前期の実績による中間申告といいます。
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この他に、仮決算による中間申告という制度がありますが、これは後ほどご説明いたします。
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社長
あ、でも納付書をよく見たら、納付額が印字されてるわ。
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小林税理士
そうですね。
税務署の場合、既に印字されていますので、納付税額を自分で計算しなくて済みます。
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社長
納付は、この納付書で納付すればいいのはわかったけど、申告はどうすんだ?

いつまでに申告するの?

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小林税理士
事業年度開始日から6ヶ月の期間を中間申告対象期間としていて、その期間の翌日から2ヶ月以内に申告する必要があります。
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社長
何だかよくわかんねーな。
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小林税理士
例えば、決算日が5/31の場合

中間申告対象期間は、6/1~11/30までとなり、その翌日(12/1)から2ヶ月以内なので1/31までに申告する必要があります。
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社長
何か小難しく言ってるけど、要は事業年度の最初の日から8ヶ月後が申告期限てことだろ?
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小林税理士
まあ普通はそうなりますので、そう考えてもらって差し支えないと思います。

地方税は?

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社長
これって、法人税だけでいいのか?県や市町村にも申告する必要があるんだろ?
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小林税理士
法人税で中間申告の対象者となっている場合には、地方税も中間申告の必要があります。
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小林税理士
なので、近いうちに県や市町村からも書類が送られてくると思いますよ。

申告しなかったらどうなるの?

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社長
でも中間申告って、要は仮の申告だろ?
こんなことやらないで1年分決算の時に申告して納税すればいいんじゃないのか?
これ、申告しなかったらどうなる?
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小林税理士
言いたいことはわかりますけどねー。
ただ、中間申告をしなかった場合でも、中間申告をしたものとみなされてしまうんですよー。
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社長
意味がよくわからなんだが・・・
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小林税理士
こうゆう規定があるんですよ。

法人税法第73条 (中間申告書の提出がない場合の特例)
 中間申告書を提出すべき内国法人である普通法人がその中間申告書をその提出期限までに提出しなかつた場合には、その普通法人については、その提出期限において、税務署長に対し第71条第1項各号(前期の実績による中間申告書の記載事項) に掲げる事項を記載した中間申告書の提出があつたものとみなして、この法律の規定を適用する。

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小林税理士
先程もお伝えしたとおり、中間申告書を提出しなかったら、中間申告書の提出があったものとみなされてしまうんです。
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小林税理士
申告書を提出されたものとみなされてしまうので、その申告書に基づいて納税義務も生じてきちゃいます。
なので、決算でまとめて払うというのはできないんですよ。

それだったら申告しなくていいんじゃないの?

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社長
中間申告書を提出しても、しなくても提出されたものとされちゃんうんじゃ、提出する意味ないんじゃないか?
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小林税理士
そうとも言えないんです。
中間申告には、前期実績による中間申告(簡単にいうと前期の法人税の半分を納める)と仮決算による中間申告の2種類があって、会社がその時の資金繰りなどを考慮してどちらも選べるのですが、何も申告がなければ前期実績による中間申告書の提出があったものとされてしまいます。
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小林税理士
なので、前期実績による中間申告の場合には、申告書を提出しても、しなくても一緒なので、納税だけ済まして申告しない会社もあるみたいです。

仮決算による中間申告とは?

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社長
中間申告には、2種類あるのはわかったんだけど、仮決算による中間申告って何?
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小林税理士
仮決算による中間申告とは、中間申告対象期間をひとつの事業年度とみなして通常の決算と同じように決算をし、その金額に基づいて法人税額を計算する制度です。
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社長
要は、決算を2回やる感じか?
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小林税理士
まあ、そんな感じです。

どんなとき利用するの?

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社長
でもなんで、そんな面倒なことするんだ?
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小林税理士
前期の業績は良かったんですけど、今期の上半期の業績が悪かった会社をイメージしてください。
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小林税理士
今現在業績が厳しくて資金繰りが悪い場合、前期の実績による中間申告で計算した金額を期限までに納めることが難しいことってあると思うんです。
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小林税理士
そんなとき、前期の実績を使うんでなく、今期の業績に基づいて計算し直したら、税額が安くなった場合は、その金額で中間申告をしたほうが会社も助かりますよね。
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社長
確かに会社経営していれば、業績悪化するときもあるからなー。
そんなとき前期の実績に基づいて機械的に納税義務が生じちゃうのは会社としても困るからか。

仮決算で多め払っといたらいけないの?

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社長
じゃあ、下半期の業績がかなり良くなりそうな感じの場合、仮決算であらかじめ多く払っておくことは出来ないのか?
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小林税理士
あー、それ。
前は良かったんですけど、今はダメなんですよねー。

税務署に早めに多く払っているんだから、税務署にとっても良いことじゃないの?

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社長
なんでだ?
早く多めに払うんだから税務署にとっても良いことなんじゃないのか?
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小林税理士
以前、本決算で赤字や業績が落ちることがある程度わかりきっている会社が、仮決算で多めに法人税を納付して、本決算で仮決算分の法人税の還付を受けるといったことが結構あったみたいだからです。
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社長
何を言ってんだか、さっぱりわからん。
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小林税理士
本決算で仮決算分の法人税の還付を受けると、この還付分に加え、還付加算金という利息的な性格の金額を受け取ることが出来るんです。
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小林税理士
これが金融機関の普通預金の金利より遥かに良いことから、この手法を利用する会社が増えたため出来なくなりました。
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社長
へー、よく考えるよなー。

計算の結果、税額が0円となった場合申告しなくていいの?

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社長
仮決算で計算したら、税額が0円になった場合、申告しなくていいのか?
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小林税理士
それはダメです。
あくまでも申告する義務があるかどうかの判定は、
前期に確定した法人税額÷前事業年度の月数×6
で行いますので、仮決算で計算した結果、
税額が0円になったとしても期限までに申告する必要があります。
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社長
面倒くせーな。
0なんだから申告しなくたっていーじゃねーか。
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小林税理士
申告しなかったら、0円ということは税務署にはわかりませんから。
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社長
あ!そうか。

メリットは?デメリットは?

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小林税理士
最後に2種類の中間申告のメリット・デメリットをわかりやすくまとめてみました。
前期実績仮決算
メリット・手続きが楽
・業績が悪い場合には一時的に資金繰りが助かる。
デメリット・業績が悪いのに仮決算をしなかった場合、前期実績で税額が確定してしまう。・通常の決算と同じようにするので税理士事務所に追加の費用が必要になる。

おわりに

前期業績が良かったのに今期の業績が厳しい場合、仮決算による中間申告の利用を検討すべきかと思います。

ただ、仮決算による中間申告は通常の決算と殆ど変わらない手続きですので時間が掛かります。

税理士事務所に直前になって仮決算による中間申告をお願いしても、日程的に間に合わないということはあり得ると思いますので、仮決算による中間申告を利用される場合には、早めに税理士事務所に相談されることをオススメします。