法人を設立する、個人として事業を開始すると

一般的には最初の2年間は消費税の申告をしなくてもよいということを

聞いたことがある方は多いと思います。

これは、消費税法には「小規模事業者に係る納税義務の免除」という規定があるためです。

この規定では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である者については、消費税を納める義務を免除するとなっています。

では、消費税を納める義務がないので商品やサービスを提供した際、消費税をいただくことは法律に違反することなのでしょうか。

結論から言うと違法ではないです。

今回は、違法ではないという根拠を条文を確認しながら見ていきます。

まず、免税事業者の規定です。

消費税法第9条 (小規模事業者に係る納税義務の免除)

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下である者については、第5条第1項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

この条文だけだと消費税を納めないのだから、お客様から消費税を貰うのはおかしいのではないかとも思える。

用語の定義を確認する

次にこの条文に書かれている用語の定義を確認していきます。

事業者(消費税法第2条1項4号)・・・個人事業者及び法人をいう。

課税期間(消費税法第19条1項1号・2号以下省略)・・・

個人事業者  1月1日から12月31日までの期間
法人     事業年度

基準期間(消費税法第2条1項14号)・・・ 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間) をいう。

例外はありますが簡単に言うと2年前

基準期間における課税売上高(消費税法第9条2項)・・・◆1 個人事業者及び基準期間が1年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第28条第1項に規定する対価の額をいう。以下この項、次条第2項、第11条第4項及び第12条の3第1項において同じ。) の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額(以下この項及び第11条第4項において「売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額」という。) を控除した残額
イ 基準期間中に行つた第38条第1項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
ロ 基準期間中に行つた第38条第1項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に63分の80を乗じて算出した金額
◆2 基準期間が1年でない法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から当該基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額を当該法人の当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額

簡単に説明しますと基準期間中に消費税を預かるべき取引を行った金額の合計額から

消費税を預かるべき取引の中から返品等生じた金額を差し引いた金額と解釈してください

第5条1項の規定(納税義務者)・・・事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第30条第2項及び第32条を除き、以下同じ。) 及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。) につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

課税資産の譲渡等(消費税法第2条1項9号)・・・資産の譲渡等のうち、第6条第1項(非課税)の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。

次の定義の資産の譲渡等のうち消費税法で消費税が非課税となっているもの以外はすべて消費税が掛かることになります。

免税事業者・課税事業者の区別はありません。

資産の譲渡等(消費税法第2条1項8号)・・・事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。) をいう。

次の3つの用語の定義は理解しずらいこともありますのでとりあえず無視します。

・特定課税仕入れ(消費税法第5条)・・・課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。

・特定仕入れ(消費税法第4条)・・・事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。

・特定資産の譲渡等(消費税法第2条1項8号の2)・・・事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう。

消費税法9条の条文を用語の定義をあてはめながら考えてみる。

事業者のうち・・・個人事業者と法人のうち

その課税期間に係る・・・暦年又は事業年度(例外あり)に係る

基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については

・・・課税期間の前々年又は前々事業年度の消費税を預かるべき取引の合計額から返品などの金額を差し引いた金額が1,000万円以下である個人事業主又は法人については

第5条第1項の規定にかかわらず、

・・・消費税を預かるべき取引を行ったのであれば本来納税義務者になるのですけれども

その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、

・・・その暦年又は事業年度中に国内で行った消費税を課税すべき取引については

消費税を納める義務を免除する。・・・預かった消費税を納めなくてよいです。

ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

・・・ただし、法律の規定に基づいて自ら課税事業者になる場合や例外的に課税事業者になってしまう場合には消費税を納める必要があります。

消費税は、消費税法で非課税となっている取引以外は課税で、

その課税の取引を行ったら原則は消費税を納めなければならないが

例外として小規模な事業者については

消費税を預かったとしても申告しなくてもよいと解釈できます。

そもそも、免税事業者が消費税を課さなければならない取引(課税資産の譲渡等)について

消費税を掛けなくてもよいという規定は存在しない。

また、消費税を預かってはいけないのであれば消費税を納めようがないので

「消費税を納める義務を免除する」という条文の作りにはならないはず。

条文から見ても免税事業者であっても消費税は預かる(掛ける)ことになります。

消費税の仕組みから説明

そもそも消費税はお客様から預かった消費税から

仕入れ業者などへ支払った消費税の差額を税務署に納めます(例外あり)

お客様から課税期間中に預かった消費税の合計    1,000,000円①

課税期間中に仕入れ業者などに支払った消費税の合計  700,000円②

税務署へ納める消費税          ①-②= 300,000円

消費税法第9条で免除されるのは、税務署へ納める300,000円のことです。

仮に免税事業者だから①のお客様から消費税を預かってはいけないとなった場合、

お客様から課税期間中に預かった消費税の合計        0円①

課税期間中に仕入れ業者などに支払った消費税の合計  700,000円②

税務署へ納める消費税          ①-②= △700,000円

しかし、免税事業者なので納める消費税0円(免税)

税務署へ納める消費税が0円だったとしても、支払った消費税700,000円は

免税事業者なので還付も出来ない。

見方を変えると、仕入れ業者を通じて税務署に700,000円払ったと考えることもできるので

そうすると免税事業者の方が多く消費税を払っていることになり

免税事業者の規定を設けた意味がなくなってしまう。

まとめ

今回は、免税事業者が消費税を預かることの可否を

法律の条文と計算例から説明させていただきました。

計算例からもわかる通り、免税事業者だからと言って

消費税をきちんと請求しないと

仕入れ業等へ支払った消費税分だけ所得が減ってしまいます。

消費税は所得から支払うものではなく

預かった分と支払った分の差額(預かった残高)を

納めるのものですが、小規模事業者については

その差額分を納めることを免除しようとするものですので

きちんと消費税を請求しましょう。