はじめに

実務上、飲食代の処理について交際費になるのか、会議になるのか、それとも福利厚生費になるのかといった判断は日常的にあるかと思います。

だいたい交際費になるケースが多いかと思うのですが、そもそも交際費とはどうゆうものか、会議費などの経費と区別する場合の判断基準は?などいろいろ疑問があるかと思います。

そこで今回は、そもそも交際費とは何なのかについてお話していきたいと思います。

交際費とは?

税務上は、「交際費」とは規定していない

交際費のイメージとしては、「得意先を飲食店などに連れて行って接待した」、「取引先にお土産物を買って行った。」、「取引先をゴルフに連れて行った」などをイメージされるのではないかと思います。

ただ、税務上は「交際費」という定義はなく「交際費」というふうに定義されていて、この「等」というのが曲者で、この「等」があることで、世間一般の方がイメージしている交際費よりその範囲はかなり広くなっています。

では、税務上はどのように規定しているかというと(読むのが面倒であれば、とりあえず太字の部分だけ目を通してください)

租税特別措置法第61条の4(交際費等の損金不算入)

4 第1項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。) のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。) をいい、第1項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第2条第15号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第2号において「飲食費」という。) であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
 ◆1 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
 ◆2 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
 ◆3 前2号に掲げる費用のほか政令で定める費用

ポイントは

①支出の相手方が「事業に関係のある者等」であること(また「等」が出てきましたが、後ほどご説明いたします。)

②支出の目的が、「事業に関係のある者等」との親睦や取引関係の円滑な進行を図るためのものであること

③支出の行為が、接待、供応(辞書では、「酒や食事を出して人をもてなすこと。」となっている)、慰安、贈答その他これらに類する行為であること

交際費等の判断基準は、上記3つのポイントに該当するかどうかで判断することになります。

しかし、②は判断しやすいが、①の「等」はどこまで含まれるのか、③の類する行為とはどこまでをいうのかがわからないため判断に悩むと思います。

事業に関係のある者等とは?

ポイント①の「事業に関係のある者等」とは、通達で次のように規定されています。

租税特別措置法通達

61の4(1)-22(交際費等の支出の相手方の範囲)
 措置法第61条の4第4項に規定する「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」には、直接当該法人の営む事業に取引関係のある者だけでなく間接に当該法人の利害に関係ある者及び当該法人の役員、従業員、株主等も含むことに留意する。(昭57年直法2-11「十一」、平6年課法2-5「三十一」、平26年課法2-6「三十二」により改正)

要するに、得意先や仕入先などの直接的な取引関係にある者だけでなく、

間接的、例えば現時点では取引関係はないが近く取引を予定している者や同業者団体なども含まれるということです。

また、その法人の役員や従業員、株主さらにここでも「等」が入っており、等には役員や従業員の家族も含まれると解されています。

となると事業に関係のある者等の範囲をザックリ理解しようと思ったら、法人の営む事業に何らかしら関係があれば「事業に関係のある者等」に含まれていると思ったほうが良いのではないかと思います。

支出の行為とは?

ポイント③で、支出の行為が接待などの行為の為に支出するというのが要件ですので、接待などの支出するための行為であれば、飲食店での支払いや贈答品の購入だけでなく、接待の送迎のためのタクシー代なども支出の行為に含まれます。

よくタクシー代などは旅費交通費で処理してしまっているケースが見受けられますが交際費になるので注意してください。

交際費等に該当すると問題があるのか?

平成21年3月31日以前は、中小企業でも交際費等の額が年間合計額(400万円まで)の10%が損金不算入とされ、さらに年間合計額が400万円を超えると10%に加えて400万円を超えた部分も損金不算入とされていました。

その後2度の税制改正で、現在は原則、資本金1億円以下の法人は交際費等の年間合計額が800万円までなら全額損金算入となりました。

一般的な中小企業の場合、年間で交際費等が800万円を超えるということはあまりなく、その結果、「福利厚生費が交際費等に該当した」「会議が交際費等に該当した」となったとしても実際影響は出ないようになってきてはいます。

接待飲食費とは?

先程の租税特別措置法第61条の4には、交際費の定義が書かれておりましたが、その下の方に交際費等に該当しないものとして 、
◆2 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用

というものがあります。

これは、簡単に説明しますと飲食店などで支払った金額にその飲食店の接待の参加した人数で割って計算した金額が5,000円以下である飲食費用のことです。(社内の人間だけでの飲食は接待飲食費には該当しません。)

接待飲食費に該当するとどうなる?

交際費等の損金算入限度額の計算には実はもう一つあって先程交際費の額が年間800万円までなら全額損金算入というご説明をさせていただきましたが、この他に接待飲食費の合計額の50%相当額のいずれか多い金額が損金算入されるという規定になっています。仮に年間の交際費等の合計額が800万円を超えている場合、飲食等交際費の年間合計額の50%に相当する金額のほうが大きければ、その金額までは損金に算入出来ることになります。

分かりづらいと思うので数字でご説明すると

交際費等の金額 年間2,000万だとします。そして全額が接待飲食費だとすると

2,000万円×50%=1,000万>800万 となるので

1,000万までは損金算入されることになります。

しかし、上記の交際費等年間で2,000万などは中小企業で使うわけもなく、さらに接待飲食費に該当するためには、一人頭5,000以下という条件の他に飲食の年月日や接待相手の得意先名、参加した人数などを記録した書類を保存して置かなけれな適用されないということもあり、一般的な中小企業にとってはほとんど利用することのない制度と思われます。

おわりに

取引先などに対して支出する飲食を伴う支出は、交際費になるのか、会議費になるのか、福利厚生費になるのか判断が迷うことはよくあると思います。

これらの周辺科目との違いは後日お伝えいたしますが、交際費かどうかを判断するには、最初に述べた3つのポイントが判断の軸となります。

まとめると交際費の判断は、①事業に関係がある者などに対し②取引の円滑な進行を図る目的で③接待などの行為が行われたかということになります。