所得税
家賃を複数年分もらった場合|見積経費と臨時所得
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個人で賃貸経営をされている方が、家賃を1年分や複数年分まとめて受け取った場合の扱いを解説します。所得が一時的に大きくなるので、使える制度を知っておくことが大切です。
この記事のポイント
- 契約で一括払いとなっている家賃は、原則として受け取った年に全額を収入に計上します。
- その場合、翌年以後にかかる経費を見積もって、その年の必要経費にできます。
- 3年分以上をまとめて受け取ると「臨時所得」になり、平均課税で税負担を軽くできる場合があります。
原則は「受け取った年」に一括計上
契約で年払いや複数年分の一括払いとなっている場合、家賃は契約上の支払日、つまり受け取った年の収入になります(くわしくは「法人と個人で違う家賃収入の計上時期」をご覧ください)。
契約では毎月払いなのに、入居者が勝手に1年分を振り込んできた場合も、受け取った年の収入になるのですか?
その場合は違います。支払日がまだ来ていない分は、受け取る権利がまだ確定していないので、受け取った年ではなく、それぞれの支払日が来た年の収入になります。
なお、契約で複数年分を一括で受け取る場合に、受け取った年に全額を計上しなくてよいのは、事業的規模で期間対応の経理をしている場合だけです(「家賃を前受処理した場合の収入計上時期」参照)。
一括計上したときは、経費を見積もって計上できる
1年分や複数年分の家賃をその年の収入として一括で計上した場合には、その家賃に関係する翌年以後の経費を見積もって、計上した年の必要経費に含めることができます。
所得税基本通達37-3(翌年以後の期間の賃貸料を一括して収受した場合の必要経費)
資産の貸付けの対価としてその年分の総収入金額に算入された賃貸料でその翌年以後の貸付期間にわたるものに係る必要経費については、その総収入金額に算入された年において生じた当該貸付けの業務に係る費用又は損失の金額とその年の翌年以後当該賃貸料に係る貸付期間が終了する日までの各年において通常生ずると見込まれる当該業務に係る費用の見積額との合計額をその総収入金額に算入された年分の必要経費に算入することができるものとする。(以下略)
ただし、不動産所得の経費はそれほど多くないことが一般的なので、見積もって計上しても、その年の所得はほかの年より大きくなることが多いです。
見積額と実際の経費に差が出たときは、差がわかった年の確定申告で調整します。実際の経費の方が多ければその差額を経費に加え、少なければその差額を収入に計上します。過去の申告を修正する必要はありません。
見積もりの計上は、必ずしないといけないのですか?
いいえ、「できる」という規定なので、しなくてもかまいません。
たとえば月5,000円の駐車場代を2年分まとめて受け取る程度であれば、所得への影響も小さいので、手間をかけずにそのまま計上してもよいと思います。
3年分以上なら「臨時所得」と平均課税
3年以上の期間の家賃を一括で受け取り、その年の収入に全額を計上する場合、その所得は「臨時所得」に当たります。不動産所得であることは変わりませんが、その中に臨時所得が含まれる、というイメージです。
所得税基本通達2-37(臨時所得に該当するもの)より(抜粋)
(1) 3年以上の期間にわたる不動産の貸付けの対価の総額として一括して支払を受ける賃貸料で、その全額がその年分の不動産所得の総収入金額に算入されるべきもの
所得税は、所得が大きいほど税率が上がる仕組み(超過累進税率)です。一時的に所得が膨らむと、税負担が大きくなりすぎてしまいます。そこで、一定の要件を満たす臨時所得には、「平均課税」という計算方法で税負担を和らげる制度があります。法人税にはない制度なので、見落とされやすいところです。
平均課税を使えるかの判定
不動産所得の場合、次の算式を満たせば、平均課税を使えます。
その年の臨時所得の金額 ≧ その年の総所得金額 × 20%
総所得金額とは、不動産所得だけでなく、給与所得や事業所得なども合わせた所得の合計(純損失などの繰越控除後)のことです。
なお、正確な算式では臨時所得に「変動所得」も加えますが、変動所得は漁業や養殖、原稿・作曲の報酬などから生じる所得なので、不動産所得だけの方は考えなくて大丈夫です。
平均課税の税額の計算
計算の流れを簡単にまとめると、次のとおりです。
- 平均課税の対象になる金額を求めます(不動産所得の方は、臨時所得の金額です)。
- 課税総所得金額から、1の5分の4を差し引いた金額(調整所得金額)に、通常の税率を掛けて税額を出します。
- 課税総所得金額から調整所得金額を差し引いた残り(特別所得金額)に、2で求めた平均税率を掛けて税額を出します。
- 2と3の合計が、所得税の額になります。
つまり、臨時所得の部分と、それ以外の部分を分けて税額を計算し、合計するという考え方です。臨時所得の大部分に、ふだんの所得水準に近い税率がかかるので、税負担が和らぎます。
申告には計算書の添付が必要
平均課税を使うには、確定申告書に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を添付する必要があります。
臨時所得だと気づかずに、平均課税を使わないで申告してしまった場合はどうなりますか?
「更正の請求」という手続きをすれば、払いすぎた税金を返してもらうことができます。気づいた時点で、早めにご相談ください。
※記事の内容は、更新日時点の法令にもとづいています。実際の判断は、個別の状況によって変わることがあります。