所得税

修繕費と資本的支出の判定|20万円・3年・60万円・10%基準を順番に解説

(更新 )

建物や設備を修理したとき、その費用を「修繕費」としてすぐに経費にできるのか、それとも「資本的支出」として資産に計上し、減価償却していくのか。判断に迷うことの多いところです。この記事では、形式的に判断するための基準を、順番に解説します。

この記事のポイント

  • 20万円未満、または3年以内の周期の修理なら、修繕費にできます。
  • 価値を高める・耐久性を増す部分は資本的支出、維持管理や原状回復は修繕費です。
  • どちらか判断できない部分にも、60万円基準や10%基準などの形式基準があります。

判断の流れ

修繕費か資本的支出かは、次の順番で判断していきます。

順番 判断のポイント 当てはまれば
1 1回の修理などの金額が20万円未満か 修繕費
2 おおむね3年以内の周期で行う修理か 修繕費
3 明らかに価値が高まる・耐久性が増すものか 資本的支出
4 通常の維持管理のためのものか 修繕費
5 壊れたものを元に戻す(原状回復)ためのものか 修繕費
6 判断できない部分の金額が60万円未満か 修繕費
7 判断できない部分が、前期末の取得価額のおおむね10%以下か 修繕費
8 割合で区分する特例を使うか 30%と10%のいずれか少ない額を修繕費、残りを資本的支出
9 上のどれにも当たらない 実質で判断する

1から順に見ていき、当てはまったところで判断が決まります。

そもそも資本的支出とは

修理のために支出した金額のうち、その資産の価値を高めたり、耐久性を増したりする部分を「資本的支出」といいます。資本的支出は、支出した年に全額を経費にすることはできず、資産として計上し、減価償却を通じて経費にしていきます。

例:賃貸アパートの改修工事に800万円をかけた場合

工事の内容 金額 扱い
外壁の塗装(通常の維持管理) 500万円 修繕費
防音のため、窓を二重窓にする工事 300万円 資本的支出(建物の価値を高める)

所得税基本通達37-10(資本的支出の例示)より(抜粋)

業務の用に供されている固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば、次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。

(1) 建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る金額

(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した金額

(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した金額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる金額を超える部分の金額

この記事では所得税の通達を引用していますが、法人税にも同じ内容の通達があります(法人税基本通達7-8-1〜7-8-5)。

社長

工事の項目が多い場合、明細を一つひとつ見て分けないといけないのですか?

税理士

原則としてはそうなります。ただ、耐久性が増したかどうかなどは判断がつきにくいので、実務では、次のような形式的な基準を使って判断していきます。

1. 20万円未満か

1回の修理や改良にかかった金額が20万円未満であれば、修繕費にできます。たとえ資本的支出に当たる内容であっても、20万円未満なら修繕費として処理できます。

2. おおむね3年以内の周期か

20万円以上でも、その修理や改良がおおむね3年以内の周期で行われるものであれば、修繕費にできます。

所得税基本通達37-12(少額又は周期の短い費用の必要経費算入)より(抜粋)

一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等が次のいずれかに該当する場合において、その修理、改良等のために要した金額を修繕費の額としてその業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、37-10にかかわらず、これを認めるものとする。

(1) その一の修理、改良等のために要した金額(中略)が20万円に満たない場合

(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

法人税では、法人税基本通達7-8-3が同じ内容です。

通達には「既往の実績」とありますが、初めての修理でも、3年以内の周期で修理が必要になる合理的な事情を説明できれば、この基準を使えます。

3. 明らかに価値が高まる・耐久性が増すか

1にも2にも当たらない場合は、37-10の考え方で判断します。避難階段の取付けのように何かを物理的に付け加えた場合や、用途変更のための改装・模様替えは、資本的支出になります。

4. 通常の維持管理か 5. 原状回復か

一方、資産を通常の状態で使い続けるための維持管理や、壊れたものを元の状態に戻す原状回復のための費用は、修繕費になります。

6. 判断できない部分が60万円未満か 7. 前期末取得価額の10%以下か

ここまでで、修繕費か資本的支出か判断できない部分が残った場合は、次の基準を使えます。

  • その金額が60万円未満であれば、修繕費にできます。
  • 60万円以上でも、その資産の前期末(前年末)の取得価額のおおむね10%以下であれば、修繕費にできます。

8. 割合で区分する特例

6や7にも当たらない場合でも、継続して適用することを条件に、判断できない部分の金額のうち、次のいずれか少ない方を修繕費とし、残りを資本的支出とすることができます。

  • 支出した金額の30%
  • その資産の前期末(前年末)の取得価額の10%

9. 実質で判断する

8の特例を使わない場合は、形式的な基準ではなく、修理の内容などを一つひとつ見て、実質で判断することになります。

修繕費か資本的支出かで、その年の経費の額は大きく変わります。大きな工事を予定しているときは、工事の前に見積書の内容を確認しておくと安心です。

※記事の内容は、更新日時点の法令にもとづいています。実際の判断は、個別の状況によって変わることがあります。