法人税
支払いを拒絶された場合の貸倒損失の可否
(更新 )
取引先とのトラブルで、売掛金の支払いを拒まれている。何度請求しても1年以上払ってもらえない。こうした場合に、売掛金を貸倒損失にできるのかを解説します。
この記事のポイント
- 営業上のトラブルで支払いを拒まれている売掛金は、基本的に貸倒損失にできません。
- 債権放棄をすると、寄付金とされるおそれがあります。
- 売掛金より取立ての費用の方が大きく、督促しても払われない場合は、貸倒損失にできる可能性があります。
「取引停止後1年以上」の特例は使えない
継続的に取引していた相手の売掛金は、取引を停止してから1年以上たてば、貸倒損失にできる特例があります(くわしくは「取引停止後1年以上経過した場合の貸倒れ」をご覧ください)。
相手は普通に営業していますが、何度請求しても支払いを拒まれています。1年以上たっているので、この特例で貸倒れにできませんか?
残念ながら、国税庁は、営業上のトラブルで支払いを拒まれているような売掛金には、この特例は使えないという考えを示しています。
国税庁 質疑応答事例「代理店契約の破棄を理由に支払拒絶を受けている債権」より(抜粋)
【照会要旨】仏壇メーカーであるA法人は、(中略)一方的にB法人との代理店契約を破棄し、C法人と代理店契約を締結して取引を始めました。このため、B法人との間に紛争が生じ、A法人がB法人に対して有していた売掛金についてB法人が支払を拒絶しています。(中略)
【回答要旨】当該売掛金について法人税基本通達9-6-3により貸倒処理をすることはできません。
(理由)法人税基本通達9-6-3は、回収不能の判断について一種の外形基準を適用して簡素化を図ったものですから、照会事案のように当事者間に営業上の紛争が生じ、そのために事実上回収困難になっている債権についてまで、これを適用して損金算入を認めるものではありません。
この特例は、相手の支払い能力が悪化したことを前提にしたものです。相手に支払い能力があるのに、トラブルのために払ってもらえないケースは対象外ということです。
ほかの貸倒れの規定はどうか
では、ほかの貸倒れの規定は使えないのでしょうか。順に見ていきます。
法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)
民事再生や会社更生などで債権が切り捨てられた場合の規定なので、相手が普通に営業しているケースには当てはまりません(「得意先が破産等した場合 法律上の貸倒」参照)。
同じ通達の(4)には、債権放棄による貸倒れの規定もありますが、これは相手の債務超過の状態が相当期間続いていることが前提です。支払い能力のある相手に債権放棄をすると、寄付金とされるおそれがあります(「債権放棄・債務免除」参照)。
事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)
法人税基本通達9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)より(抜粋)
法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。
こちらも、相手の資産状況や支払い能力から全額が回収できないことが明らかな場合の規定なので、支払い能力がある相手には使えません。
取立ての費用が売掛金より大きい場合(法人税基本通達9-6-3(2))
法人税基本通達9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)より(抜粋)
(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき
この規定は、相手の支払い能力の悪化を要件にしていません。そのため、売掛金が少額で、取り立てにかかる費用の方が大きい場合であれば、支払いを督促しても払われないときに、貸倒損失(備忘価額を残します)にできる可能性があります。
まとめ
営業上のトラブルで売掛金を回収できない場合は、次のとおりです。
- 基本的に、貸倒損失として損金にはできません。
- 債権放棄をすると、寄付金とされるおそれがあります。
- 売掛金より取り立ての費用の方が大きい場合は、督促していることを前提に、貸倒損失にできる可能性があります。
※記事の内容は、更新日時点の法令にもとづいています。実際の判断は、個別の状況によって変わることがあります。