ここ最近、サラリーマンの方でもアパート経営を始められる方が増えております。
アパート経営を含む不動産賃貸経営での税務相談をよく受けるのですが、その質問に対する回答を検討するに当たり、前提となるのが
その不動産所得が事業的規模か、事業的規模ではないかということです。
今回は、事業的規模かどうかの判断の基準となる5棟10室基準についてご説明いたします。
目次
5棟10室基準とは?

今年の確定申告の税務相談会なんかで、サラリーマンの方なんかが賃貸経営を始めたっていう方が、結構いたんですけど、社長のまわりではどうですか?

まわりにはいないけど、多くなってきているのか?

ええ、今年の確定申告の無料相談会ではサラリーマンの方だけでなく、外国の方なんかもアパート経営を始めて、その税金のことで相談に来られていましたよ。

たしかにアパート経営なんかは管理会社に任せれば、あんまりやることなさそうだし、副業なんかにはちょうど良さそうだもんな。

ええ、でも税金の面ですと不動産賃貸経営って、事業的規模か、事業的規模じゃないかで落とせる経費の範囲や事業税なんかも変わってきちゃいますし、結構難しいんですよ。

事業的規模ってなんだ?

イメージ的には、アパートを何棟も持っていたり、何十室もあるようなマンションを持って、手広く賃貸経営を行っているのが、事業的規模。

空き地を駐車場として貸していたり、アパート1棟とか、自宅の2階部分を改装して他人に貸しているなど、比較的こじんまりと賃貸経営をしている場合は事業的規模以外となります。

要は、手広く賃貸経営をやっているってことか。
でもそれって、どうやって判断するんだ?
でもそれって、どうやって判断するんだ?

ええ、その判断基準が多分耳にしたこともあるかと思いますけど、「5棟10室基準」という基準で判断していくことになります。

ああ、それ聞いたことあるけど具体的にどういうものなんだ?

それは、下記の通達が参考になります。
所得税基本通達26-9(建物の貸付が事業として行われているかどうかの判定)
建物の貸付が不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行つているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2)独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。

(1)か(2)のいずれかの条件を満たしていればいいんだな?

はい、なのでアパートやマンション等であれば部屋数10室以上、最近少なくなりましたけど貸家であれば5棟以上で事業的規模となります。

ただ、このアパートやマンションの中に自分で住んでいる部屋がある場合や親族などにタダで貸してる部屋なんかがある場合には、その部屋数は除いて判定します。
5棟10室未満の場合

でもこの通達「おおむね」って書いてあるぞ。
ということは5棟10室未満でも、例えば8室とかでも事業的規模になるんじゃないか?
ということは5棟10室未満でも、例えば8室とかでも事業的規模になるんじゃないか?

たしかに部屋数が8室でも、1室の家賃が高額だとかであれば 「賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合」などとあるので、5棟10室基準を満たさなくても事業的規模となることはあります。

ただ、一般的なアパートやマンションなんかでは、5棟10室以上で判断しているのが一般的で、「おおむね」とかいてあるからといって、8室とかで事業的規模で申告するのはリスクはあると思います。
土地だけの貸付や駐車場の場合は?

でも、この通達ってアパートや貸家のことしか書いてないよな。駐車場や土地だけの賃貸の場合はどうやって判断するんだ?
駐車場の場合は50台以上、土地の場合は50件以上

駐車場の場合なんかは、通達には明示されていませんがおおむね50台以上の貸付で事業的規模となります。

土地の貸付についても、通達で明示されていませんが、おおむね50件以上の貸付で事業的規模となります。

駐車場は50台以上、土地の貸付は50件以上で事業的規模か。アパートや貸家と比べるとハードル高いな~。

ええ、そうですね。
ただ、土地の貸付なんかも収入の状況などに応じて50件に満たなくても事業的規模になることもあるようです。
ただ、土地の貸付なんかも収入の状況などに応じて50件に満たなくても事業的規模になることもあるようです。
個人事業税の事業的規模の判断基準

所得税なんかは、土地の貸付や駐車場の貸付なんかは通達等にきちんと明示されていないのですが、個人事業税については、結構細かく基準がありますので判断するのに助かります。

また、土地の貸付や駐車場の貸付の件数が所得税と基準が違うので注意が必要です。

ちなみに下は、東京都の場合です。

http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/kojin_ji.html

他の県の場合でも、県税事務所のホームページなどに基準が書かれていると思いますので、判断に迷った際は、貸付不動産の所在地の県税事務所のホームページを確認されることをオススメします。

都税事務所は、細かく決められているから判断しやすくていいな。
アパートと貸家の組み合わせは、どう判断する?

あ、でもアパート8室と貸家1棟を所有している場合って、どう判断するんだ?

この場合、貸家は5棟以上で事業的規模になることから、アパートに換算すると1棟=2室となるので、合計10室以上となって事業的規模に該当します。
不動産を共有している場合は?

それと、アパートを夫婦や親子で共有して持っている場合は、持ち分で判断するのか?

いいえ、持ち分では判断しません。
例えば夫婦で10室のアパートを持っていて、夫婦それぞれの持ち分が1/2の場合
10室×1/2=5室なので10室に満たないという判断はしないということです。
例えば夫婦で10室のアパートを持っていて、夫婦それぞれの持ち分が1/2の場合
10室×1/2=5室なので10室に満たないという判断はしないということです。

あくまでも実際の室数や棟数で判断します。
ですので、夫婦どちらも事業的規模となります。
ですので、夫婦どちらも事業的規模となります。
サブリースの場合は?

最近よくある一括借上(サブリース)っていうのはどういうふうに判断するんだ?

サブリースだからといって、特別な判断をするわけではありません。10室のアパートをサブリースするのであれば、10室で判断しますので事業的規模となります。
まとめ

事業的規模を判定する5棟10室基準をまとめると、以下のようになります。
ポイント
・アパート、マンションの場合は10室以上
・貸家は5棟以上
・自分で住んでいる部屋や親族などにタダで貸している部分は除いて判断する
・土地の貸付は50件以上、駐車場は50台以上
・所得税と個人事業税では、基準が若干違うので注意が必要
・種類の違う不動産を所有している場合の判断は、どちらか一方をもう片方の不動産に換算して合計で判断する
・共有の場合は、持ち分を考慮しない
・サブリースの場合も通常の賃貸と同様に判断する

で、結局事業的規模になると何のメリットがあるんだ?

事業的規模のメリット・デメリットにつきましては、次回お伝えさせていただきます。