今回は、賃貸アパートなどの不動産を取得するに際して支払う各種税金(不動産取得税、登録免許税、未経過固定資産税)についてお話させていただきます。

不動産取得税・登録免許税の取り扱い

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小林税理士
賃貸経営をするために不動産の購入後に支払った不動産所得税ですが。
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社長
取得のために支払ってるから、必要経費にならないんだろ?
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小林税理士
支払った年の必要経費に算入されます。
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社長
なんでだよwww
前回と言ってることが違うじゃねーか!
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小林税理士
税金の支払いはいいんです(笑)。
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あと不動産購入時に一緒に支払う登記費用に係る登録免許税も支払った年の必要経費に算入していいんですよ。
国税庁HPより 
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2215.htm
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社長
登記費用なんて、それこそ取得のための費用なのに何で仲介手数料は、取得価額に算入されて、不動産取得税や登録免許税は、支払った年の必要経費でなるんだろうな。
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小林税理士
仲介手数料の他にも、建物を建築する際の設計料や建築確認申請費用、土地の地質調査や立退料なんかも取得価額に算入されます。
業務用不動産の取得価額に算入される付随費用

例)
・仲介手数料
・立退料
・設計料
・建築確認申請費用
・地質調査費
・地鎮祭の費用    など

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社長
要は、税金の支払いに関しては、たとえ取得のために掛かったものでも必要経費に算入出来て、それ以外はダメ(取得価額に算入)ってことだな?
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小林税理士
まあ、測量費のように一部例外もありますが、そのような理解でいいんじゃないでしょうか。

非業務用の場合

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小林税理士
ちなみに非業務用の場合、例えば自宅として利用するために購入した不動産なんかは、不動産取得税や登録免許税なんかは、取得費(取得価額)に算入されます。(参考通達38-9)
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社長
取得費ってことは、将来売った時の経費になるってことだな。
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小林税理士
ええ、なので不動産取得税の領収書や登記費用の領収書なんかは、無くさず売却するまで保管しておく必要があります。

未経過固定資産税の取り扱い

買主側の取り扱い

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小林税理士
あと未経過固定資産税の取り扱いなんですが。
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社長
あれ?固定資産税は必要経費ってなってただろ?(参考通達37-5)
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小林税理士
固定資産税じゃなく、未経過固定資産税です。
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社長
何だ未経過固定資産税って?
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小林税理士
未経過の固定資産税のことです。
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社長
それくらいわかるわwww
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小林税理士
簡単に説明すると、不動産売買の際に、購入する不動産に掛かる固定資産税を売却日までは売主が、それ以後は買主が負担するという契約を結ぶことが一般的にあるんです。
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小林税理士
その固定資産税を日割り計算して、購入日以後の分を売主に支払うその固定資産税相当額のことを未経過固定資産税なんて言います。
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社長
でも固定資産税なんだから、払った年の必要経費になるんだろ?
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小林税理士
厳密には固定資産税ではないので、必要経費にならない(取得価額に算入する)んです。
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社長
いや、固定資産税だろw
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小林税理士
買主は、購入時点では固定資産税の納税義務者じゃないので、支払った未経過固定資産税相当額は固定資産税ではないのです。
東京都主税局HPより 
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html
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社長
これ東京だけじゃねーのか?
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小林税理士
他でも同じですよ(笑)。
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小林税理士
それに国税不服審判所の裁決でも取得価額に算入すべきとの事例もあるんです。

未経過固定資産税等相当額は譲受資産に係る購入対価を構成するものとして固定資産の取得価額に算入すべきであるとした事例


要旨》
 請求人は、不動産を譲り受けた際に譲渡人に支払った未経過固定資産税等相当額(当該不動産に係るその譲受けの年度の固定資産税及び都市計画税のうち当該不動産の引渡日以後の所有期間分に相当する額をいう。)は、固定資産税等そのものであり租税公課であるから不動産の取得価額に含まれない旨主張する。
 しかしながら、固定資産税等は地方税法に基づき1月1日の不動産の所有者が納税義務を負うことになっており、賦課期日後に所有者となった譲受人が固定資産税等の納税義務を負うものではないから、譲受人が譲渡人に支払った未経過固定資産税等相当額を租税公課そのものであるということはできない。そして、売買当事者間で合意に基づき授受された未経過固定資産税等相当額は、あくまでも合意された売買の取引条件の一つであり、当該条件を満たさないことには売買取引そのものが完了しないと考えられるから、当該未経過固定資産税等相当額は取得関連費用ではなく、狭義の購入の代価として取得価額に含まれるとするのが相当である。


国税不服審判所HPより 平成25年8月30日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0204040000.html#a92
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社長
ほんと税金の支払い以外は、必要経費にさせないよな(笑)。

売主側の取り扱い

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社長
未経過固定資産税をもらった売主側ってどうなるんだ?
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小林税理士
もらった売主側は、譲渡所得の収入金額になっちゃうんですよ。
国税庁HPより 
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/10.htm
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社長
じゃあ、売主が払った(又は払うことになる)固定資産税は取得費になるのか?
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小林税理士
ならないですね。
その売却した不動産が不動産所得や事業所得の業務の用途で利用されていたら、不動産所得や事業所得の必要経費になりますけど。
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社長
じゃあ、自宅として利用してた不動産だったら?
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小林税理士
何にも考慮されないですね。
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社長
せめて売却した年に支払った(又は支払う)固定資産税については、取得費にならないとおかしいよな。
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小林税理士
ええ、そうですね。

まとめ

不動産購入に際しての各種税金の取り扱い

①不動産取得税、登録免許税
業務用(アパートなど)不動産の場合
・・・必要経費算入
非業務用(自宅など)不動産の場合
・・・取得価額(取得費)に算入

②未経過固定資産税
業務用・非業務用ともに取得価額(取得費)に算入

ちなみに売主側は
未経過固定資産税は譲渡所得の収入金額となる。
一方で、売却した年に支払った(又は支払う)固定資産税は、取得費にならない。(事業又は不動産所得の業務の用途に利用していた不動産の場合には、売却年の事業又は不動産所得の必要経費になる)

参考通達

所得税基本通達37-5(固定資産税等の必要経費算入)
 業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車所得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。(昭51直所3-1、平5課所4-1改正)

所得税基本通達38-9(非業務用の固定資産に係る登録免許税等)
 固定資産(業務の用に供されるものを除く。以下この項において同じ。)に係る登録免許税(登録に要する費用を含む。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は、当該固定資産の取得費に算入する。(昭51直所3-1、直法6-1、直資3-1、平17課資3-7、課個2-25、課審6-13改正)

所得税基本通達38-10(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)
 埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構築物の取得費とすることができる。上水道又は下水道の工事に要した費用の額についても、同様とする。(昭56直所3-3、平元直所3-14改正)
 (注)1 専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得費に算入する。
 2 土地の測量費は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、土地の取得費に算入する。

所得税基本通達38-11(土地、建物等の取得に際して支払う立退封等)


 土地、建物等の取得に際し、当該土地、建物等を使用してした者に支払う立退料その他その者を立ち退かせるために要した金額は、当該土地、建物等の取得費又は取得価額に算入する。