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小林税理士
前回、個人と法人とで異なる家賃収入の計上時期についてお話させていただきました。
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今回は、法人と同じように家賃を期間対応で計上したい場合の方法についてお話させていただきます。

期間対応とは?

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家賃収入の期間対応とは、例えば3月分として2月中にいただいた家賃を3月の収入に計上することを言います。
期間対応基準と支払日基準

契約上、翌月分家賃を当月末日までに支払うこととなっている場合
・支払日基準の場合
5月分家賃は、4月に収入計上
4/30 現金〇〇/家賃収入〇〇

・期間対応基準
4月に入金された家賃は、一旦前受家賃で処理し、5月に家賃収入に振り替える。
4/30 現金〇〇/前受家賃〇〇
5/1  前受家賃〇〇/家賃収入〇〇

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社長
期間対応基準の場合、毎月
「現金〇〇/前受家賃〇〇」
「前受家賃〇〇/家賃収入〇〇 」ってやらなきゃいけないのか?
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小林税理士
基本的にはそうなりますね。
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社長
面倒クサッ!
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小林税理士
まあ実際には、決算時に
前年の前受(前年の12月入金分)
 「前受家賃〇〇/家賃収入〇〇」
今年の前受(今年の12月入金分)
 「現金預金〇〇/家賃収入〇〇」
又は一旦収入計上しておいて
 「家賃収入〇〇/前受家賃〇〇」
というふうにやっているのではないでしょうか?
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社長
そうだよな。年の途中の月は、いちいち前受に振り替えてもあんまり意味ないもんな。

届出書は不要、ただし要件あり

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社長
期間対応で計算する場合って、事前に税務署に届出とかする必要あるのか?
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小林税理士
特に届出書などの提出は必要ありません。
ただ、要件はあります。
前受処理の要件

帳簿書類を備えて継続的に記帳していることを前提として

事業的規模の場合
①帳簿上、前受収益及び未収収益の経理をしていること。
②1年を超える期間の賃貸料は、その前受収益又は未収収益について明細書を確定申告書に添付していること。

事業的規模以外の場合
①1年以内の賃貸料については、上記の①に該当すること。

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社長
②の「1年を超える期間の賃貸料」って何?
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小林税理士
例えば、2年分の家賃を一括でもらったような場合が該当します。
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社長
上の要件なんだけど、普通に毎月家賃をもらってる場合であれば、事業的規模も事業的規模以外も違いはないんだろ?
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小林税理士
そうですね。
事業的規模と事業的規模以外で違いが出るのは、1年を超える家賃を一括で受け取った場合の取り扱いだけですね。
1年を超える家賃を一括で受け取った場合(期間対応基準)

事業的規模の場合
前受家賃の明細を確定申告書に添付することで、期間対応が可能。

事業的規模以外の場合
期間対応基準が採れず、支払日基準となる。(要は、一括でもらった年に全額収入計上する。)

計上時期を変更した年は11か月分でOK?

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社長
この期間対応基準って、今まで支払日基準で家賃の収入計上をしていて、翌年から期間対応基準に変更した場合、翌年の収入金額は11か月分になっちゃわないか?
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社長
例えば、前家賃の契約で令和2年1月分の家賃を令和元年12月中に受け取った場合、12月に収入計上するだろ?
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社長
それで、翌年から期間対応基準に変更した場合は、1月分は既に前年に計上しているから、令和2年は2月分~12月分の11か月だけ計上することになるが、これでOKなの?
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小林税理士
はい。それは問題ないこととされています。
(下記「参考」の 「(計上時期の変更のあつた年分の総収入金額の計算)」をご確認ください。)

参考

                            直所 2-78
                         昭和48年11月6日
                           国税局長 殿
                       沖縄国税事務所長 殿
                            国税庁長官
不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額 の計上時期について


 所得税法第26条第1項《不動産所得》に規定する不動産等の賃貸料の収入金額の計上時期に関する取扱いを下記のとおり定めたから、これによられたい。
(理由)
不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、原則として契約上の支払日の属する年分の総収入金額に算入することとしているが、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなどの一定の要件に該当する場合には、その年の貸付期間に対応する賃貸料の額をその年分の総収入金額に算入することを認めることとしたものである。

(不動産等の貸付けが事業として行なわれている場合)
1 所得税法第26条第1項に規定する不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、所得税基本通達36-5《不動産所得の総収入金額の収入すべき時期》により、原則としてその貸付けにかかる契約に定められている賃貸料の支払日の属する年分の総収入金額に算入するのであるが、その者が不動産等の貸付けを事業的規模で行なっている場合で、次のいずれにも該当するときは、同法第67条の2《小規模事業者の収入及び費用の帰属時期》の規定の適用を受ける場合を除き、その賃貸料にかかる貸付期間の経過に応じ、その年中の貸付期間に対応する部分の賃貸料の額をその年分の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額とすることができる。
(1) 不動産所得を生ずべき業務にかかる取引について、その者が帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて不動産所得の金額を計算していること。
(2) その者の不動産等の賃貸料にかかる収入金額の全部について、継続的にその年中の貸付期間に対応する部分の金額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算しており、かつ、帳簿上当該賃貸料にかかる前受収益および未収収益の経理が行なわれていること
(3) その者の1年をこえる期間にかかる賃貸料収入については、その前受収益または未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること。
(注) 「不動産等の賃貸料」には、不動産等の貸付けに伴い一時に受ける頭金、権利金、名義書替料、更新料、礼金等は含まれない。
(不動産等の貸付けが事業として行なわれていない場合)
2 その者が不動産等の貸付けを事業的規模で行なっていない場合であつても、上記1の(1)に該当し、かつ、その者の1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸料の収入金額の全部について上記1の(2)に該当するときは、所得税法第67条の2の規定の適用を受ける場合を除き、その者の1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸料の収入金額については、上記1の取扱いによることができる。
(計上時期の変更のあつた年分の総収入金額の計算)
3 その賃貸料にかかる収入金額につき賃貸料の支払日により総収入金額を計算していた者が新たに上記1もしくは2の取扱いによることとした場合または上記1もしくは2の取扱いにより総収入金額を計算することとしていた者が賃貸料の支払日によることとなつた場合には、次による。
(1) 新たに上記1または2の取扱いによることとした年分の前年以前の貸付期間にかかる賃貸料の額のうち、支払日が到来していないため当該前年以前の各年分の総収入金額に算入されていない金額がある場合には、その金額は、新たに上記1または2の取扱いによることとした年分の総収入金額に算入する。
(注) 前払の賃貸料については、たとえば前月払の月額賃貸料の場合には、新たに上記1または2の取扱いによることとした年分は、11か月分の賃貸料を総収入金額に算入する。
(2) 上記1または2の取扱いによらないこととなつた最初の年分の前年以前に支払日が到来している賃貸料の額のうち、その賃貸料にかかる貸付期間が経過していないため、当該前年以前の各年分の総収入金額に算入されていない金額がある場合には、その金額は、当該最初の年分の総収入金額に算入する。
(経過的取扱い)
4 この取扱いは、今後処理するものから適用する。この場合において、昭和47年分以前の所得税については、その年分の賃貸料にかかる前受収益および未収収益についての明細書を提出したときは、上記1の(2)および(3)の要件を具備しているものとして取り扱うものとする。