仕事をしていると役員や従業員に食事を提供することってよくあると思います。

でもこれって以前、交際費のところでお話しましたが、経済的利益(金銭で支給される給与以外の非金銭的報酬)となって、原則的には給与として課税されてしまうということお伝えしました。

ただここで、原則的にはというふうにお伝えしたのは例外があるからです。

今回は、どのような場合、従業員の食事代が給与課税されないのかをお伝えいたします。

勤務時間中(宿日直や残業時間中以外)

通常の勤務時間中に提供する食事代の取扱は以下のようになっております。

所得税基本通達 36-38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)
 
 使用者が役員又は使用人に対し支給した食事(36-24の食事を除く。)
につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。(昭50直所3-8追加、昭59直所3-7改正)

簡単にご説明しますと

①従業員が半額以上、食事代を負担している

② 食事を提供する会社側の食事負担額が税抜きで月3,500円以下

この2つの条件を満たせれば、役員や従業員に食事代が給与として課税されることはありません。

例えば、1食500円(税抜き)のお弁当を会社が従業員に提供し、従業員から半額の250円を徴収している場合

①の半額以上負担の条件は満たしていますが

②の条件は、仮に出勤日数が22日とすると

(500円-250円)×22日=5,500円となり、月3,500円を超えてしまうので

食事の提供は課税扱いとなってしまいます。

残業時間中や宿日直の場合

先程は、通常の勤務時間中ということでしたが残業時間の間に支給される食事代の取扱は通達で以下のようになっています。

所得税基本通達36-24(課税しない経済的利益……残業又は宿日直をした者に支給する食事)

 使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行つた者に限る。)
に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。(昭50直所3-8改正)

要は、課税されないということです。

夜間勤務者の食事代

残業や宿日直では、食事代は課税されないのに対し、夜間勤務者の場合には以下のように取り扱いがことなっています。


正規の勤務時間の一部又は全部が深夜(午後10時から翌日午前5時) に及ぶいわゆる深夜勤務者に対し、夜食の提供ができないため、これに 代えて通常の給与に加算して支給される夜食代で、その支給額が勤務1 回につき300円以下のものについては、課税されません(昭59直法6−5)。  この場合の支給額が非課税限度額の300円を超えるかどうかは、消費 税及び地方消費税の額を除いた金額により判定します(平元直法6−1 (最終改正平26課法9-1))。

平成31年(2019年)版 源泉徴収のあらまし P.18より

ここでは、1回の勤務につき税抜き300円以下であれば、支給された食事代は課税されませんが、300円を超えてしまえば、支給された食事代全額が課税されてしまうということです。

残業の場合と比べるとずいぶん条件が厳しいです。

課税されたっていいんじゃない?

給与課税されるというと、何か損したようなイメージがありますが実際はどうでしょう?

本当に損するのか計算してみたいと思います。

前提条件

社会保険料控除後の給与の額が25万円の従業員がいたとします。

扶養親族なしの場合、源泉徴収税額は6,530円です。

月22日勤務で、1回の食事代500円とします。

なお、住民税に関しては、ここでは無視します。

半額を会社が負担していた場合

半額の250円を負担していたとすると

課税される額は(500円-250円)×22日=5,500円が給与課税されます。

そうすると、給与の25万に5,500円を加えた255,500円の源泉徴収税額を見てみると6,750円となります。

つまり、食事代5,500円が課税されることで源泉徴収税額が、

220円(6,750円-6,530円)増えることになります。

逆に言えば、税負担220円増えるだけで、従業員は5,500円分の食事代を負担しなくてよいのです。

そう考えれば、従業員の側からすれば、課税されても全然OKなのではないでしょうか?

全額会社が負担していた場合

従業員の自己負担が0円だとすると

食事代全額の11,000円(500円×22日)が課税されます。

この場合の源泉徴収税額は、261,000円(250,000+11,000)を

源泉徴収税額の月額表に当てはめると6,960円となります。

食事代が課税されたことによる源泉徴収税額の増加額は

430円(6,960円-6,530円)となり、

従業員からすれば、食事代が浮いている分給与の手取りが増えるためお得だということがわかります。

税務調査で指摘されないように

食事代のことで問題となるのは税務調査の場面です。

上記の課税の取り扱いを知らないと、源泉所得税は1月の税額は微々たるものですが、

例えば、従業員10名の会社で全員に食事を提供していて税務調査で給与課税が指摘されてしまった場合

仮に一人につき、月250円の追加の源泉徴収が必要となった場合には、

月250円×12ヶ月×10人×3年(調査対象期間)=90,000円と結構金額が増えてしまうものです。

従業員に課税してでも会社が全額負担するか、課税されない程度に負担するかは会社の考え方によると思いますが、判断をする際に今回の話を参考にしていただければと思います。