今回は、仕事上必要な資格を取得するための費用や研修の費用を会社が負担した場合、資格を取得した又は研修を受けた役員又は従業員の税務上の取扱についてご説明させていただきます。
小林税理士
社長のところって、従業員の資格取得のための費用を会社で負担するとかってあるんですか?
社長
ないよ、なんで?
小林税理士
いや、ちょっと資格取得費用のことで相談を受けたんで社長のとこはどうなのかなと思って。
社長
ああ、そうなんだ。
で、経費で落ちるの?
で、経費で落ちるの?
小林税理士
う~ん、落ちるものもあったり、落ちないものもあったり・・・
社長
なんだよそれ!はっきりしねーな!
法律とかに書いてないのか?
法律とかに書いてないのか?
小林税理士
通達では、いちおう規定はされているんですけど。
目次
非課税となる場合
所得税基本通達36-29の2(課税しない経済的利益……使用人等に対し技術の習得等をさせるために支給する金品)
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。(平28課法10-1、課個2-6、課審5-7追加)
小林税理士
職務に直接必要で、適正なものであれば、資格を取得又は研修などを受けた従業員は給与課税されない取扱にはなっています。
社長
そもそもなんで、研修受けたり、資格取ったりしたら給与課税されるとか、されないとかって話になるんだ?
おかしくないか?
おかしくないか?
小林税理士
簡単に説明すると、資格を取得すればその資格は本人のものになりますよね?
小林税理士
例えば、会社の負担で従業員が簿記2級を取得したら、費用を負担したのは会社だから会社が簿記2級の資格を取得したということにはならないですよね?
社長
当たり前だろ。
小林税理士
であれば、その資格が従業員本人のものになるのであれば、本人が自腹で負担すべきと考えると、それを会社が負担したのであれば、それは資格取得費用分を給与として払ったとするのが税務の考え方なんです。
社長
ややこしいな。
小林税理士
ただそれでも、原則は給与課税ですが、職務に直接必要で適正なものであれば課税されないということになります。
ここまでのポイント
対象者:役員、従業員
目的:免許又は資格の取得、技術又は知識の習得
方法:研修会・講習会・大学等の聴講
上記のために会社が負担した費用は
原則:役員又は従業員の給与
例外:業務の遂行に直接必要かつ適正なものであれば給与課税せず、研修費となる。
非課税のポイント
社長
でも、仕事で研修会に参加したり、資格取ったりするんだから、普通は業務に必要なもんだろ?
小林税理士
社長。業務に必要ではなくて、業務に直接必要でないとダメなんです。
社長
また細かいこと言い始めたな。
小林税理士
例えば、簿記の資格であれば経理の従業員には直接必要ですが、製品の製造などに従事する職員には直接必要ないですよね?
小林税理士
または、経理の従業員で簿記は必要だったとしても、自己啓発系の研修会などは、間接的には仕事のモチベーションアップに繋がったとしても直接的には必要ないですよね?
社長
要は間接的なものは、必要であっても非課税にはならないということだな。
社長
あと「適正なもの」ってなんだ?
小林税理士
適正な金額という意味です。
社長
曖昧な表現だな。どうせ基準となる金額も法律で決められてないんだろ?
小林税理士
ええ、そうなんですよ。
ですので、「会社負担がいくら位までだったら大丈夫か?」なんて聞かれても、具体的な金額を答えることは出来ないんですよね。
ですので、「会社負担がいくら位までだったら大丈夫か?」なんて聞かれても、具体的な金額を答えることは出来ないんですよね。
社長
多分、講習会なり、研修会なんかも同じような内容であればある程度一般的な相場ってあるだろうから、それで判断するしかないよな。
小林税理士
そうですね。
ここでのポイント
・業務の遂行上、直接必要であること(間接的なものはダメ)
・適正な金額まで非課税だが、適正な金額の基準となる金額は法律上規定されていない。(相場や一般常識で判断する)