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社長
ちょっとした疑問なんだけど。
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小林税理士
何ですか?
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社長
給料計算で、健康保険とか厚生年金とかってあるよな?
あれっていちいち半分を会社で、半分を個人が負担って
どうしても半分ずつ負担しないといけないのか?
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小林税理士
一応法律で規定されてますので。

各保険法の規定

健康保険法
(保険料の負担及び納付義務)
第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。

厚生年金保険法
(保険料の負担及び納付義務)
第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

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社長
でも、給与計算とか経理処理とか面倒だろ?
だったら社会保険料全額を法定福利費で処理した方が楽じゃん。
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小林税理士
楽は楽ですけど、その場合、個人が負担すべき社会保険料を会社が負担してあげてるんですから、自己負担部分は給与となってしまいますよ。

給与課税

所得税基本通達 

36-32(課税しない経済的利益使用者か負担する少額な保険料等)
 使用者が役員又は使用人のために次に掲げる保険料又は掛金を負担することにより当該役員又は使用人が受ける経済的利益については、その者につきその月中に負担する金額の合計額が300円以下である場合に限り、課税しなくて差し支えない。ただし、使用者が役員又は特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを対象として当該保険料又は掛金を負担することにより当該役員が受ける経済的利益については、この限りでない。(昭46直審(所)19、昭63直所3-8改正)
 (1)健康保険法、雇用保険法、厚生年金保険法又は船員保険法の規定により役員又は使用人が被保険者として負担すべき保険料
 (2)生命保険契約等又は損害保険契約等に係る保険料又は掛金(36-31から3ト31の7までにより課税されないものを除く。)
 (注)使用者がその月中に負担する金額の合計額が300円以下であるかどうかを判定する場合において、上記の契約のうちに保険料又は掛金の払込みを年払、半年払等により行う契約があるときは、当該契約に係るその月中に負担する金額は、その年払、半年払等による保険料又は掛金の月割額とし、使用者が上記の契約に基づく剰余金又は割戻金の支払を受けたときは、その支払を受けた後に支払つた保険料又は掛金の額のうちその支払を受けた剰余金又は割戻金の額に達するまでの金額は、使用者が負担する金額には含まれない。

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小林税理士
会社が負担した、自己負担の保険料の月額が300円以下であれば課税しないことになってますけど、社会保険で300円以下ってことはないですもんね。
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社長
俺に対する福利厚生の一環として福利厚生費で落とせないのか?
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小林税理士
俺に対するって?
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社長
いや、もう全額会社負担にしちゃってんだけど。。。
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小林税理士
えー、もうやっちゃたんですか。
それは、今期から?
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社長
先月から。
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小林税理士
だったら、会社に立て替えてもらっていたということで、自己負担分を会社に戻したらどうです?
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社長
いや、そこを福利厚生費で。
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小林税理士
いや、上記の通達にも書いてあるので、それはダメだと思いますよ(笑)。
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社長
じゃあ、給与になってもいいから源泉所得税さえ追加で払えばOK?
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小林税理士
税務的には大丈夫かもしれませんけど、そうすると現物給与になるので社会保険料も上がっちゃいませんか?
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社長
そのときは、また給与扱いで源泉所得税を追加払いするということで。
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小林税理士
そしたら、またその分給与の金額が増えて、保険料も上がる可能性が出てくるんじゃないですか?
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社長
そのときはまた、
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小林税理士
保険料の上限に達するまでこのやりとり続けるんですか(笑)。

定期同額給与について

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小林税理士
それに、期の途中で給与が増額されることになっちゃうので、社長の自己負担分に相当する給与の金額は損金にならないですよ。
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社長
あ、そうか。

社会保険料控除について

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小林税理士
ちなみに、社長個人側では、給与課税された会社が負担した社会保険料自己負担分は、社会保険料控除の対象になります。

所得税基本通達

74・75-4(使用者が負担した使用人等の負担すべき社会保険料)
 役員又は使用人が被保険者として負担すべき社会保険料を使用者が負担した場合には、その負担した金額は、役員又は使用人が支払った又は給与から控除される社会保険料の金額には含まれないものとする。ただし、その負担した金額でその役員又は使用人の給与等として課税されたものは、給与から控除される社会保険料の金額に含まれるものとする。(昭46直審(所)19、平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
 (注) 36-32により課税されない少額の社会保険料は、社会保険料控除の対象とはならないが、使用者が負担した小規模企業共済等掛金は、全て給与等として課税され、小規模企業共済等掛金控除の対象となることに留意する。

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社長
給与で課税されてるってことは、その給与で社会保険料を払ったってことになるから、社会保険料控除は適用できるんだな。
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小林税理士
社会保険料全額を会社負担にすれば、一見給与計算や経理処理なんかが楽になりそうですけど、追加の源泉所得税の計算や社会保険料の金額が変更することも考えると、原則通りやっておいた方がいいと思いますよ。
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社長
そうだな。