先週から交際費についてお話させていただきましたが、今週も引き続き税務上の交際費等となるものとその他の経費となるものとの違いについてお伝えさせていただきます。
今回は、福利厚生費と交際費等の違いの確認と交際費等ではなく、給与とされてしまった場合のリスクについてもお伝えいたしたいと思います。
目次
従業員と飲食=福利厚生費としてませんか?
中小企業の方の中には、会社の従業員と仕事おわりに飲みに行って、その支払を会社が負担し、福利厚生費で処理されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
社長の考えとしては、仕事終わりに従業員と共に飲食することで普段仕事中話せないことを話して親睦を図り、その結果、従業員満足を高める効果があるのだから会社の経費になるのは当然だろうと思われているのではないでしょうか?
社長の考え方自体が間違ったものでないですが、しかし税務上の取扱は必ずしも一般的な社長さんの考え方とは一致していないのです。
その判断をするには、交際費等や福利厚生費の判断基準を知る必要があります。
そもそも交際費等とは?
税務上交際費等となるものについての考え方は、以前お話しましたので気になる方はこちらをお読みください。
ポイントとなるのは
①支出の相手方が「事業に関係のある者等」であること
②支出の目的が、「事業に関係のある者等」との親睦や取引関係の円滑な進行を図るためのものであること
③支出の行為が、接待、供応(辞書では、「酒や食事を出して人をもてなすこと。」となっている)、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
の3つが判断の基準となります。
しかし、例えば仕事終わりに社長が会社の従業員を連れて飲みに行った場合
①従業員は事業に関係がある者である。②支出の目的が社長と従業員の親睦にある。③支出の行為が接待・供応などに該当する。
となると、交際費等の判断基準3つのポイント全てに該当するので交際費等となります。
なお、一人頭5,000円以下の接待飲食費は社内だけの人間での飲食は該当しません。
福利厚生費の判断基準というのはあるのでしょうか。
おおまかに福利厚生費と交際費等の判断基準を示すものとして以下のものが参考になります。
租税特別措置法通達61の4(1)-10(福利厚生費と交際費等との区分)
社内の行事に際して支出される金額等で次のようなものは交際費等に含まれないものとする。(昭52年直法2-33「35」、昭54年直法2-31「十九」、平6年課法2-5「三十一」、平19年課法2-3「三十七」により改正)
(1)創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用
(2)従業員等(従業員等であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用
この通達を読むに従業員との飲み代が福利厚生費なのか、交際費等になるのかの判断は
①従業員等におおむね一律に行われているかと②通常飲食に要する費用かが判断のポイントのようです。逆に特定の従業員のみであったり、高額な飲食であれば交際費等(場合によっては給与)となります。
この場合の「おおむね」とは、必ずしも従業員全員というわけではなく、特定の事業所や部・課などでも良いとされています。
例えば、仕事で何らかの打ち上げとして通常飲食に要する費用で従業員全員と飲みに行くなどであれば福利厚生費となるのでしょうが、社長と特定の従業員とでの飲みであれば交際費等に該当するということです。
交際費等になると何が問題なの?
中小企業の場合、仮に福利厚生費だと思っていたら税務上は交際費等に該当してしまったというような場合でも、
原則として資本金1億円以下の中小企業の場合は、
年間800万円までは、交際費等は税務上損金となります。
一般的な中小企業では、年間800万円も交際費を使うという会社は少ないと思いますので、仮に福利厚生費が交際費等に該当してしまっても税務上は影響はないといえます。
ただ、福利厚生費だと思って処理していたが税務上は給与に該当してしまった場合には大変です。
コワいのは給与扱いになってしまうこと
交際費等に該当せず、給与に該当してしまったらどうなるのでしょうか。
まず、役員に対する給与ですので定期同額給与(基本的に毎月同じ金額の給与)に該当しなければ、法人税の計算上損金になりません。
この場合、飲食代は通常月によってまちまちでしょうから定期同額の余地はなく飲食代部分は損金にならない役員報酬となってしまいます。
また、役員報酬になるので社長には追加で源泉所得税を納める必要が出てきます。
さらに、飲食店に支払った代金に含まれる消費税は、自社の消費税の申告をする上での計算上、売上にかかる消費税から控除出来なくなってしまいます。
つまり、法人税(地方税含む)・所得税(地方税含む)・消費税すべてで追加の課税がされてしまうということになります。
ちなみに通達では、以下のように規定しています。
租税特別措置法通達61の4(1)-1(交際費等の意義)
措置法第61条の4第4項に規定する「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいうのであるが、主として次に掲げるような性質を有するものは交際費等には含まれないものとする。(昭57年直法2-11「十一」、平6年課法2-5「三十一」、平26年課法2-6「三十二」により改正)
(1)寄附金
(2)値引き及び割戻し
(3)広告宣伝費
(4)福利厚生費
(5)給与等
つまり、業務上必要性のない従業員との飲食というふうに税務署から指摘を受ければ、それは社長が個人的な飲み代(従業員分含む)を会社に付け替えただけとなってしまいます。
そうすると、先程の社長が従業員を連れて飲みに行ったのが給与となった場合には、会社が支払った飲食代は、会社が飲食店へ支払ったのではなく会社が一旦社長に給与を払い、その給与から飲食店へ支払われたということになってしまいます。
まとめ
今回は、福利厚生費と交際費等との違いや給与になった場合のリスクなのについてお話させていただきました。
飲食費が福利厚生費となるポイントは
①従業員におおむね一律に
②通常要する費用(高額でない) のこの2点を覚えておくと良いと思います。