今月14日、与党税制改正大綱が公表されました。
今回の改正の内容で
個人事業者版の事業承継税制の創設がありました。

今回は、その内容について見ていきます。

個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

今回の大綱で個人事業者版の事業承継税制について、下記のように記載されています。

認定相続人が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税を猶予する。

法人版との違いは、法人版は被相続人が保有していた自社の株式であるのに対し、
個人事業者版は、個人事業者である被相続人が所有していた特定事業用資産であることです。

特定事業用資産とは?

納税猶予の対象となる特定事業用資産とは、大綱で下記のように記載されております。

(注2)上記の「特定事業用資産」とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く。以下同じ。)の用に供されていた土地(面積400㎡までの部分に限る。)、建物(床面積800㎡までの部分に限る。)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る。)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものをいう。

特定事業用資産の範囲は
土地・建物(面積制限があり)、建物以外の減価償却資産は
償却資産税や営業用として自動車税が又は軽自動車税の課税対象となっているものということです。
「営業用」としてというのは、緑ナンバーのような営業車でないと対象にならないのかそれとも「その他これらに準ずるもの」で実際に事業で使用していれば白ナンバーでも良いのかは、現時点(H30.12.20)では不明です。
また、ソフトウェアのような減価償却資産にはなるが、
償却資産税の課税対象とならない資産は対象にならないだろうと思われます。

さらに、特定事業用資産となるには、資産の要件を満たしているだけではダメで
「青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているもの」で
なければ特定事業用資産には該当しないことになります。
なので、白色申告者や青色申告でもB/Sの記載がないものは対象となりません。

個人の確定申告の場合、
B/Sに事業で使用している土地が計上されておらず、事業主勘定が多額になっていることがよくありますが、今回の事業承継税制を検討する場合には、青色申告決算書の見直しが必要になってくると思われます。

その他

猶予税額の計算方法は、法人版の事業承継税制と同じ。
手続きなども法人版と同じような感じとなるようです。

個人版特有のもの
・被相続人は相続開始前、認定相続人は相続開始後に青色申告の承認を受けていなければならないこと。

・認定相続人が、相続税の申告期限から5年経過後に法人成りして特定事業用資産を現物出資して法人成りした会社の株式を保有しているなど一定の要件を満たせば納税猶予が継続されること。

・納税猶予の適用を受ける場合には小規模宅地等特例の適用を受けることが出来ないこと。

法人の方が優遇されている

今回の大綱を読んでみると個人事業者の事業承継税制より法人版の事業承継税制のほうが優遇されていることがわかります。

個人版事業承継税制
・土地について
面積制限があり、400㎡を超えた部分は特定事業用資産に該当しないので納税猶予の対象外となり、課税が発生する。

・建物について
面積制限があり、床面積800㎡を超えた部分は特定事業用資産に該当しないので納税猶予の対象外となり、課税が発生する。

というように特定事業用資産にかかる相続税については全額猶予になるが
特定事業用資産にとならない超過部分の資産は相続税がかかってしまうことになります。

法人版の事業承継税制であれば法人の所有する土地や建物について面積制限はなく、また、土地や建物が法人所有でない場合でも、(賃貸借の場合には)特定同族会社事業用宅地等が適用でき、建物も貸家の評価が出来ますが、個人事業者版の場合、大綱で納税猶予を受けた場合には特定事業用宅地が使えず、自己の事業に使用しているので建物も貸家の減額は使えません。

相続税の全額が猶予されるわけではない

株式に対応する相続税額が全額猶予される法人版の事業承継税制と違い、個人事業者版の事業承継税制は事業で使用している資産に係る相続税の全額が猶予されるわけではないことに注意が必要です。上記で説明しました土地等の面積超過部分だけでなく、例えば、棚卸資産も対象となっていませんし、売掛金等の金銭債権や事業で使用している預金なども対象となっていませんので、利用にあたってどの程度効果があるのか検討が必要と思われます。