所得税では、個人事業主と同一生計の親族が個人事業主の事業から対価を受けている場合には、その対価の額は、原則的にはその個人事業主の事業所得の金額の計算上、必要経費には算入できません。(所得税法56条)
「原則的に」ということですから例外もあります。
今回は、その例外の一つである「青色事業専従者給与」についてご説明いたします。
目次
青色事業専従者給与
個人事業をされていて生計を一にする親族に事業を手伝ってもらっている場合には、所定の届出書の提出などを条件に、事業を手伝ってもらったことに対する給与を個人事業主の必要経費として参入することが出来ます。
青色事業専従者給与が認められる要件
①個人事業主が青色申告者であること。
②「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を必要経費に算入しようとする年の3月15日までに提出していることが前提となります。
しかし、新たに事業を開始した場合などは事業開始日から2月以内に提出していること。
③給与の金額が届出書に記載された金額の範囲内であること。
➃親族が青色事業専従者の要件を満たしていること。
これらの要件を満たす必要があります。
ギモン
個人事業主が青色申告者でなかったら?
→適用ありませんが、事業専従者控除(次回以降ご説明)の適用の可能性はあります。
届出期限までに提出できなかったら?
→その年は、適用できません。
届出書に記載された金額より多く支払ったら?
→超過部分は、必要経費に算入されません。
超過部分を出さないため、届出書に多めに金額を記載したら?
→給与の金額が過大であるとして、必要経費に算入されない可能性があります。
青色事業専従者の要件とは
①個人事業主である青色申告者と同一生計親族であること。
②その年12/31現在で年齢が15歳以上であること。
(青色事業専従者又は青色申告者が年の途中で死亡した場合には死亡当時)
③その年を通じて6か月を超える期間、青色申告者の事業に専ら従事していること。
ただし、青色申告者の死亡・廃業などの場合や青色事業専従者の死亡など一定の理由がある場合には、事業に従事することができると認められる期間の1/2を超える期間専ら事業に従事していれば、青色申告者の事業に専ら従事しているとされます。
ギモン
同一の生計親族でなかったら?
→要件を満たしませんので青色事業専従者給与にはなりませんが、通常の給与として必要経費に算入されます。なお、その際届出書等の提出は必要ありません。
青色事業専従者が青色申告者の事業以外にも仕事を掛け持ちしていたら?
→基本的には、専ら従事しているとは認められないが、掛け持ちしている仕事の勤務時間が短いなどの場合で青色申告者の事業に専ら従事することの妨げにならないような場合には、専ら従事していることになります。
青色事業専従者給与の実務上の留意点
1.青色事業専従者に該当し、給与の支払いを受ける場合には、配偶者(特別)控除や扶養控除の適用は受けられません。
2.給与や賞与の支給は必要経費に算入されますが、退職金として支払った金額は必要経費に算入されません。
3.事業が赤字になるなどの理由で、支払った青色事業専従者給与を支払っていないことにして事業を黒字にし、配偶者控除などを受けるということは認められません。
4.青色事業専従者給与は、給与を支払っていることが原則ですので未払計上をして必要経費に算入することは認められません。ただし、一時的な資金不足などの理由により未払計上し、短期間のうちにその未払計上をした金額を支払っているような場合には、必要経費として認められる場合があります。
おわりに
今回は、青色事業専従者給与についてご説明いたしました。
青色事業専従者給与は、きちんと要件を満たしていれば
親族間での所得分散の効果もあるので、節税にも有効です。
活用されていない方は検討をしてみてください。