消費税
消費税率が1%に変わる日をまたぐ取引は? 経過的な取扱いと請求書の書き方
(更新 )
令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる法案が国会で審議されています。税率が変わる日の前後には、「3月に契約して4月に納品する」「3月に売った商品が4月に返品された」といった取引が必ず出てきます。こうした取引で税率を間違えると、請求書や申告をやり直すことになりかねません。この記事では、税率が変わる日をまたぐ取引の税率と、請求書(インボイス)の書き方を解説します。
この記事は、国会で審議中の法案と、国税庁が公表しているQ&Aの内容をもとにしています。法案が修正された場合などは、内容が変わることがあります。引下げの全体像は「飲食料品の消費税が2年間1%に? 何がいつから変わるのか」で解説しています。
この記事のポイント
- 税率は、契約した日ではなく、商品を引き渡した日で判定します。令和9年4月1日以後の引渡しは、原則として1%です。
- 令和9年1月1日より前に結んだ定期便の契約や、カタログ販売などには、4月以後も8%になる「経過的な取扱い」があります。選ぶことはできません。
- 締め日をまたぐ請求書は、3月分と4月分を分けて発行するか、1枚の中で区分して記載します。
原則は「引き渡した日」で判定
1%が適用されるのは、令和9年4月1日以後に行う飲食料品の譲渡です。判定するのは、契約した日ではなく、商品を引き渡した日です。
- 令和9年3月に契約して、4月に引き渡す → 1%
- 令和9年3月に仕入れて、4月に販売する → 仕入れは8%、販売は1%
令和9年3月31日までに仕入れた飲食料品は、販売が4月1日以後になっても、仕入れの税率は8%のままです。
深夜まで営業しているお店の場合
たとえば、午前1時まで営業しているお店が、毎日午前1時で締めて売上を集計しているとします。4月1日の午前0時〜1時の売上を「3月31日分」として計上するのがいつものやり方なら、その時間帯の飲食料品の販売は、すべて8%で処理して構いません。毎期続けている売上の計上方法に従ってよい、という取扱いです。
売り手と買い手で計上する日が違うとき
売り手は出荷した日(出荷基準)、買い手は検収した日(検収基準)で計上していると、税率が変わる日をまたぐことがあります。たとえば、取引先が令和9年3月30日に出荷し、自社が4月2日に検収した場合です。
この場合、買い手は、売り手が適用した税率で仕入税額控除をします。売り手が8%で請求してきたら、買い手も8%で処理します。インボイスに書かれた税率と税額をもとに計算すればよい、ということです。
税込の金額は書かれているのに、税率(8%か1%か)がはっきりしない請求書を受け取ったときは、取引先に確認してから処理しましょう。
返品や貸倒れがあったとき
令和9年3月31日までに8%で販売した飲食料品が、4月1日以後に返品された場合は、8%で返品の消費税額を計算します。返品された日の税率(1%)ではありません。
令和9年3月31日までの販売で生じた売掛金が、4月1日以後に貸倒れになった場合も同じく8%です。
4月以後も8%になる取引(経過的な取扱い)
令和9年4月1日以後の引渡しでも、次の2つの取引には8%が適用されます。
| 定期供給契約 | 通信販売 | |
|---|---|---|
| 例 | 代金先払いの食材の定期便など | カタログギフト、お中元のカタログ販売など |
| いつまでに | 令和9年1月1日より前に契約を結ぶ | 令和9年1月1日より前に販売条件を示す |
| ほかの条件 | 4月1日より前に代金を受け取っている(受け取った部分だけが対象) | 4月1日より前に申込みを受けている |
ここでいう「定期供給契約」は、不特定多数の人に、週や月などの一定の周期でおおむね規則的に商品を届ける契約です。「通信販売」は、新聞・チラシ・カタログ・インターネットなどで販売条件を示し、郵便・電話・インターネットなどで申込みを受ける販売です。訪問して対面で申込みを受ける販売は含まれません。
うちの定期便、8%と1%のどちらにするか選べるんですか?
選ぶことはできません。条件にあてはまれば、自動的に8%になります。
1%にしたい場合は、契約や販売条件に「4月以後は1%で計算した価格にする」と書いておくことが必要です。
次の場合は、経過的な取扱いの対象にならず、**1%**が適用されます。
- 契約や販売条件で、1%を前提にしていることが確認できる場合(「令和9年4月以後の販売分は税率1%による」「税率1%に変わった場合は●●円とする」などの定めがある場合)
- 令和9年1月1日以後に、契約の金額を変更する契約を結んだ場合(4月以後の分を1%の金額に変えて、差額を返金するなど)
なお、所得税の現金主義(現金の出入りで収入・経費を計上する方法)を使っている小規模な個人事業者が、令和9年3月31日までに販売したものは、代金の受取りが4月1日以後になっても8%です。
インボイスと帳簿の書き方
インボイスや帳簿の記載事項は、基本的に変わりません。変わるのは、飲食料品の適用税率が1%になり、消費税額を1%で計算するところだけです。
1%の飲食料品も、軽減税率の対象品目です。そのため、今と同じように「*は軽減税率対象」といった記載をしていれば、「税率1%の対象品目である旨」を新たに書く必要はありません。
締め日をまたぐ請求書の書き方
毎月20日締めで請求している卸売業の会社なら、令和9年4月分の請求書(3月21日〜4月20日)には、8%の取引と1%の取引が混在します。このような場合は、次のどちらかの方法で作成することが考えられます。
- 3月31日までの取引と、4月1日以後の取引で、請求書を分けて発行する
- 1枚の請求書の中で、3月分と4月分を区分して記載する
2の方法で作成する場合のイメージを、次の取引で見てみます(金額は税抜です)。
- 3月21日〜31日:飲食料品 30,000円、日用品(10%)10,000円
- 4月1日〜20日:飲食料品 50,000円、日用品(10%)10,000円
| 区分 | 対象の金額 | 消費税額 |
|---|---|---|
| 3月分 8%対象(軽減税率) | 30,000円 | 2,400円 |
| 3月分 10%対象 | 10,000円 | 1,000円 |
| 4月分 1%対象(軽減税率) | 50,000円 | 500円 |
| 4月分 10%対象 | 10,000円 | 1,000円 |
| 合計 | 100,000円 | 4,900円 |
税率ごとの合計は、1%対象が50,000円(消費税500円)、8%対象が30,000円(消費税2,400円)、10%対象が20,000円(消費税2,000円)です。請求額は104,900円になります。
インボイスには、このように税率ごとに区分した金額と消費税額を記載します。8%と1%はどちらも「軽減税率対象」なので、品目に*印をつけるだけだと区別がつきません。日付で3月分と4月分を分けて、小計を出しておくとわかりやすくなります。
今から確認しておきたいこと
- 定期便・カタログ販売の契約や販売条件:令和9年1月1日より前に結ぶ契約や示す販売条件は、経過的な取扱いの対象になることがあります。1%を前提にするなら、その旨を書いておきましょう。
- 請求書を作るシステム:締め日をまたぐ請求書で、8%と1%を区分して出せるか確認しましょう。
- 売上・仕入れを計上する日:出荷基準・検収基準など、自社と取引先の計上方法を確認しておくと、4月の処理で迷いません。
税率が変わる日の前後は、請求書のチェックや取引先とのやり取りが増えます。自社の取引がどの扱いになるか迷うときは、お気軽にご相談ください。
※記事の内容は、更新日時点の法令にもとづいています。実際の判断は、個別の状況によって変わることがあります。