以前、費用と必要経費・損金の違いをお話ししましたが

今回は必要経費と損金の違いをお話ししたいと思います。

必要経費は範囲が狭い

以前、費用は会計上の用語で必要経費・損金は税法上の用語であること,

そして、損金は法人税法上の用語で必要経費は所得税法上の用語であることをお伝えしました。

では、損金と必要経費は税目(法人税か所得税か)が違うだけで

内容は一緒なのでしょうか。

結論を言うと一緒の部分が多いが、所得税のほうが範囲が狭いです。

条文で確認すると

法人税法22条3項で損金について

法人税法第22条

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
◆1 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
◆2 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。) の額
◆3 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

と書かれております。

一方、所得税法37条1項(2項は省略)で必要経費について

所得税法第37条 (必要経費)

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第35条第3項(公的年金等の定義) に規定する公的年金等に係るものを除く。) の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。) の額とする。

と書かれております。

2つの条文で共通するのは

所得税法も法人税法も

・原価

・販売費及び一般管理費その他の費用

は損金又は必要経費となるということです。

違いは損失についての取り扱いです。

法人税法では、資本等取引(簡単な例でいえば配当金の支払いなど)以外で生じた損失は

原則損金となりますが、

所得税法では、原則的には損失は必要経費とはならないということになります。

(実際には、別段の定めで損失についての取り扱いも規定しています。)

年商ライトプランスタンダードプランプラチナプラン
1,000万円未満17,000円/月25,000円/月40,000円/月
3,000万円未満25,000円/月30,000円/月45,000円/月
5,000万円未満30,000円/月35,000円/月50,000円/月
1億万円未満40,000円/月45,000円/月60,000円/月
2億円未満50,000円/月55,000円/月70,000円/月
2億円以上別途お見積り別途お見積り別途お見積り

上記の表を見ると所得税法より法人税法のほうが税務上落とせる費用の範囲が広いということになります。

所得税法では損失は例外的取り扱い

所得税法では、損失は原則必要経費にはならないということでしたが

別段の定めとして、損失の取り扱いがされています。

所得税法第51条 (資産損失の必要経費算入)

居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失(当該資産の損壊による価値の減少を含む。) その他の事由により生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。) は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

3 災害又は盗難若しくは横領により居住者の有する山林について生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。) は、その者のその損失の生じた日の属する年分の事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

上記の1項~3項までは、損失の金額は必要経費に算入するとなっていますので

結局、法人税法とほぼ同じように見えますが

しかし、雑所得で生じた損失については必要経費とはなりません。

次に、4項では「事業の用」でなく「業務の用」の場合には、損失に制限をしています。

4 居住者の不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産(山林及び第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失) に規定する資産を除く。) の損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの及び第1項若しくは第2項又は第72条第1項(雑損控除) に規定するものを除く。) は、それぞれ、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額(この項の規定を適用しないで計算したこれらの所得の金額とする。) を限度として、当該年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

例えば不動産所得でアパートを取り壊した場合、取り壊しに伴う損失(取り壊し費用や建物の簿価)は

そのアパートが事業の用に供していれば、その損失の全額を必要経費に算入し、

業務の用に供していれば、その損失のうち損失計上前の不動産所得の金額までしか必要経費に算入されません。

(例:損失の金額100,000円 損失計上前不動産所得の金額60,000円 必要経費算入額60,000円 40,000円は切り捨て)

法人税法であれば損失が切り捨てになることはありません。(繰越欠損金を除く)

なお、この「事業」と「業務」という考え方については、

ここでは書ききれないので別の機会にお伝えさせていただきます。

経費に関しては法人税有利

今回は基本的な損金と必要経費の範囲の違いをお伝えさせていただきました。

このほかにも、家族従業員に対する給与や家事関連費など

法人税では経費で落ちるのに所得税では経費で落ちないというものが結構あります。

今後、家族従業員の給与や家事関連費などの経費について

法人と個人の場合の取り扱いなどをお伝えしていこうと思います。