今回は、個人でアパートを購入した場合の土地と建物の購入価格の区分の方法についてお話させていただきます。
目次
なぜ区分が必要か?
・減価償却費の計算ができない。
・消費税の納税義務者の場合、消費税の計算ができない。
土地は、価値の変動はあっても、減価(使用による劣化など)はないので。
土地建物を一括取得した場合の区分
(土地等と建物等を一括取得した場合の土地等の取得価額の区分)
租税特別措置法通達35の2-9 土地等を建物等と一の契約により取得した場合における当該土地等の取得価額については、次によるものとする。(平21課資3-5、課個2-14、課審6-12追加)
(1) 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されており、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該契約により明らかにされている当該土地等の価額による。
(2) 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されていない場合であっても、例えば、当該土地等及び建物等が建設業者から取得したものであってその建設業者の帳簿書類に当該土地等及び建物等のそれぞれの価額が区分して記載されている等当該土地等及び建物等のそれぞれの価額がその取得先等において確認され、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該確認された当該土地等の価額によることができる。
(3) (1)及び(2)により難いときは、当該一括して取得した土地等及び建物等の当該取得の時における価額の比によりあん分して計算した当該土地等の金額を、当該土地等の取得価額とする。
(1)と(2)は、価額がおおむね適正であることが前提として
(1)当事者間で決めた価額がある場合・・・その価額
(2)当事者間で決めてないが、何らかの方法で価額が確認できる場合
・・・その価額
(3)(1)又は(2)により難い場合・・・時価の比で按分
(2)もあまり現実的ではないですね。
実務上の区分の方法
(1)固定資産税評価額で按分する方法
(2)建物の標準的な建築価額で算定する方法(差額で土地の価額を求める)
(3)路線価で土地の価額を算定する方法(差額で建物の価額を求める)
(4)(2)の方法で算定し建物の価額と(3)で算定した土地の価額を基に按分する方法
(1)固定資産税評価額で按分する方法
例)購入価額5,000万円のアパートの場合
上記アパートの固定資産税評価額
土地 3,500万円
建物 500万円
按分計算
土地部分:5,000万×3,500万/4,000万=4,375万・・・①
建物部分:5,000万-①=625万
(2)建物の標準的な建築価額で算定する方法
「建物の標準的な建築価額表 」で検索すればすぐ手に入りますよ。
例)令和元年9月に木造中古アパート(平成20年1月築、床面積200㎡)を5,000万円で取得した場合
計算手順)
①建物の標準的な建築価額表 より「木造・平成20年築」の場合の建築単価を求める(計算表の②の欄)・・・156,000円/㎡②①で求めた建築単価に床面積を掛けて建物の取得価額を求める。(計算表の④の欄)
156,000×200㎡=31,200,000円
③購入した中古アパートの新築時から購入時までの経過年数を求める。(計算表の⑥の欄)
令和元年9月から平成20年1月までの経過期間
⇒11年8か月 6か月以上は1年とするため経過年数は12年
④新築時から購入時までの減価償却費相当額を求める。(計算表の8の欄)
木造建物の場合の耐用年数22年。(非業務用の場合を除く)
この場合の償却率は0.046
31,200,000×0.9×12×0.046=15,500,160円
⑤建物の取得価額(上記②の金額)から上記④の減価償却費相当額を差し引いた金額が建物の取得価額となる。
31,200,000-15,500,160=15,699,840円(建物の取得価額)
⑥アパートの購入価額5,000万から上記⑤で求めた金額を差し引いた金額が土地の取得価額となる。
50,000,000-15,699,840=34,300,160円(土地の取得価額)
(3)路線価で土地の価額を算定する方法
で、0.8って何?
例) 令和元年9月に木造中古アパート(平成20年1月築、床面積200㎡)を5,000万円で取得した場合
計算手順)
前提 路線価16万円(説明のため各種補正率は考慮しないものとする。)
①まず土地の取得価額を算出する。
160,000×200㎡÷0.8=40,000,000円(土地の取得価額)
②購入価額から上記①の金額を差し引いて建物の取得価額を算出する。
50,000,000-40,000,000=10,000,000(建物の取得価額)
(2)の方法で算定した建物の価額と(3)で算定した土地の価額を基に按分する方法
結局、どの方法でやればいいの?
時間がない又は面倒な場合には、固定資産税評価額で按分する。
こんな感じか?