前回は不動産所得の金額を計算するにあたっての前提となる事業的規模か、事業的規模ではないかの判断をする際の基準である「5棟10室基準」についてご説明させていただきました。
今回は、事業的規模になった場合のメリットやデメリットなどについてご説明させていただきます。
目次
事業的規模のメリット
小林税理士
前回の事業的規模の話の続きですけど、どんなメリットがあるかってことですよね?
社長
わかりやすい説明でな。
小林税理士
メリットをあげていくと
・青色申告特別控除65万円の控除
・同居親族への給与を経費にできる
・回収不能家賃などを損失発生年の必要経費に算入できる
・取り壊した建物などの損失を全額必要経費に算入できる
などがあります。
・青色申告特別控除65万円の控除
・同居親族への給与を経費にできる
・回収不能家賃などを損失発生年の必要経費に算入できる
・取り壊した建物などの損失を全額必要経費に算入できる
などがあります。
65万円の青色申告特別控除
小林税理士
メリットの1つ目は、65万円の青色申告特別控除が利用できるということですね。
社長
事業的規模じゃないと利用できないのか?
小林税理士
不動産所得の他に事業所得もあれば別ですけど、事業的規模でない場合には10万円の控除となってしまいます。
社長
差額55万円か。結構デカイな。
小林税理士
ええ、所得税が最低の5%の税率の人であっても、(復興税は無視するとして)所得税と住民税あわせて82,500円(55万円×(5%+10%))も税額が変わってきますからね。
社長
そんなに変わるのか!
小林税理士
ええ。所得税の税率の高い方であれば、もっと節税になります。
社長
これだけでも、十分メリットがあるな。
同居親族への給与を経費にできる
小林税理士
メリットの2つめは、同居の親族に対して支給した給与を必要経費に算入出来ることです。
社長
え?家族に給与に払ったら経費にならないんだっけ?
小林税理士
社長みたいに法人の場合は経費(損金)になりますけど、個人の場合には、原則必要経費にならないんですよ。
小林税理士
このへんの細かいところは、下記の記事をご参照してください。
回収不能家賃などを必要経費に算入できる
小林税理士
メリットの3つめは、回収不能家賃などを必要経費に算入できることです。
社長
事業的規模以外だと、回収できなかった家賃は経費にならないのか?
小林税理士
はい。回収不能となった年の必要経費にはなりません。
小林税理士
ただ、回収不能となった家賃は、その家賃が収入計上された年にさかのぼって収入自体がなかったこととされます。
社長
ん?何を言ってるのかさっぱりわからん。
小林税理士
簡単にいうと回収不能となった家賃を計上していた年の確定申告をやり直さなきゃいけないということです。
社長
めんどくせーな。
でも、経費で落とせるんならいいよな。
でも、経費で落とせるんならいいよな。
小林税理士
いえ、それが必ずしも回収不能家賃全額が経費で落とせるとは限らないんです。詳しくは、また別の機会にお話しますが、例えば、回収不能家賃を計上した年の不動産所得が0円や赤字であった場合には、いっさい経費で落とせないといったこともあり得ます。
社長
なんだそれ。家賃踏み倒された挙げ句、経費にもならないってんじゃたまったもんじゃないな。
取り壊した建物などの資産損失を全額必要経費に算入できる
小林税理士
メリットの4つめは、物件の取り壊し費用などを全額必要経費に算入できることです。
社長
事業的規模以外だと、全額は経費にならないのか?
小林税理士
その年の不動産所得の金額によって、なったり、ならなかったりするんですよ。たとえば、
前提
取り壊した建物の未償却残高(帳簿価格) 3,000,000円(資産損失額)
取り壊した年の資産損失計上前の不動産所得の金額 1,000,000円
事業的規模の場合
不動産所得の金額
1,000,000-3,000,000=▲2,000,000円
上記損失は、他に事業所得や給与所得があれば損益通算をして、それでも引ききれない損失は、翌年以降3年間繰越ができる。
事業的規模以外の場合
資産損失の限度額は、資産損失計上前の不動産所得を限度とするので
1,000,000<3,000,000 ∴1,000,000円
不動産所得の金額
1,000,000-1,000,000=0円
不動産所得が0円なので、損益通算もなく、3年間の繰越もない。
資産損失額のうち2,000,000円部分はなかったものとされる。
社長
建物の取り壊しの損失なんて、高額になりやすいから、この差はかなりデカイな。
事業的規模のデメリット
小林税理士
事業的規模の場合には、メリットが多いのですが、全くデメリットがないわけではありません。
小林税理士
例えば、
・個人事業税の納税義務者となる。
・複式簿記での記帳を求められる。
などがあります。
・個人事業税の納税義務者となる。
・複式簿記での記帳を求められる。
などがあります。
個人事業税の納税義務者となる
小林税理士
前回、個人事業税と所得税とでは、事業的規模の基準が若干違うことをお伝えしましたが、所得税で事業的規模に該当すれば、個人事業税の納税義務者となります。
ただ、個人事業税の場合、事業主控除といって事業税の対象となる所得から1年間で290万円を控除出来ます。
社長
事業税って経費で落ちるんだっけ?
小林税理士
はい、翌年の経費になります。
社長
290万も控除されて、事業税も経費でも落とせるんだったら、デメリットとしては小さいな。
複式簿記での記帳を求められる
小林税理士
もう一つのデメリットは、事業的規模の場合、青色申告の65万円控除を受けられますが、その場合複式簿記による記帳を行って、損益計算書と貸借対照表の両方を作成しなければならないので、その煩わしさはあります。
社長
でも、手書きやエクセルでやろうとすれば大変だろうけど、会計ソフトを使えば、それほど面倒ではないだろ?
まとめ
事業的規模のメリット・デメリット
メリット
・青色申告特別控除65万円の控除
・同居親族への給与を経費にできる
・回収不能家賃などを損失発生年の必要経費に算入できる
・取り壊した建物などの損失を全額必要経費に算入できる
デメリット
・個人事業税の納税義務者となる
・複式簿記での記帳を求められる。