今回の豪雨で、会社の取引先やその従業員などに被害を受けられた方もいらっしゃると思います。

取引先を支援するため会社として何らかの義援金や見舞金などを支払いたいといった場合、支出した金銭などはどのように取り扱われるのでしょうか?

今回は、被災者である取引先に対する義援金等についてお話させていただきます。

原則的な考え方は寄付金だが...

avatar
小林税理士
以前、寄付金のところでお話させていただきましたが、何ら見返りを求めず、相手に財産を給付することになるので
原則的な考えをすれば寄付金となってしまいます。
avatar
小林税理士
また、寄付金となってしまった場合、取引先に対する寄付金だと、税務上の寄付金の種類では「一般寄付金」となりほとんど損金とならないケースが多いです。
avatar
小林税理士
しかしながら、このようなケースでは取引先の復旧支援を目的とすることから別途、通達で寄付金又は交際費等に該当しない旨が規定されています。

取引先に対する災害見舞金等

avatar
小林税理士
取引先に対する見舞金などは通常、「交際費等」に該当しますが、災害復旧支援を目的とした災害見舞金等であれば交際費等に該当しないものとして取り扱われます。

租税特別措置法通達61の4(1)-10の3 (取引先に対する災害見舞金等)  

 法人が、被災前の取引関係の維持、回復を目的として災害発生後相当の期間内にその取引先に対して行った災害見舞金の支出又は事業用資産の供与若しくは役務の提供のために要した費用は、交際費等に該当しないものとする。(平7年課法2-7「二十八」により追加、平10年課法2-7「四」、平19年課法2-3「三十七」、平23年課法2-17「三十」により改正)
(注)
1 自社の製品等を取り扱う小売業者等に対して災害により滅失又は損壊した商品と同種の商品を交換又は無償でした場合も、同様とする。
2 事業用資産には、当該法人が製造した製品及び他の者から購入した物品で、当該取引先の事業の用に供されるもののほか、当該取引先の福利厚生の一環として被災した従業員等に供与されるものを含むものとする。
3 取引先は、その受領した災害見舞金及び事業用資産の価額に相当する金額を益金の額に算入することに留意する。ただし、受領後直ちに福利厚生の一環として被災した従業員等に供与する物品並びに令第133条に規定する使用可能期間が1年未満であるもの及び取得価額が10万円未満のものについては、この限りでない。

災害復旧過程において行うことが必要

avatar
小林税理士
上記通達は、災害発生後から通常の営業を再開するまでの復旧期間内に行うことが必要です。

会計処理はどうする?

avatar
小林税理士
この規定は、税務上の「交際費等」にならないというだけのことですので、会計処理は普通に「接待交際費」で処理して構いません。
avatar
小林税理士
金額が結構大きいなどの場合には、別途「災害見舞金」などの科目で特別損失のところに計上しても問題ありません。

領収書は必要?

avatar
小林税理士
通常被災した取引先に対して、災害見舞金に対する領収書を求めることは難しいと思いますので、実務的には領収書がなくても支払ったことがわかる書類や帳簿に相手先や金額・年月日・災害見舞金である旨などを記録しておくことで認められます。

得意先に対する売掛金・貸付金等の免除をした場合

avatar
小林税理士
得意先が被災したことで、復旧支援を目的として見舞金等の支給に代えて、又は見舞金等と併せて売掛金等を免除した場合には、その免除額は寄付金又は交際費等のいずれにも該当しません。

法人税基本通達9-4-6の2(災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等)
 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下9-4-6の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下9-4-6の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。(平7課法2-7追加)
 (注)「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

租税特別措置法通達61の4(1)-10の2 (災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等)

法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下61の4(1)-10の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下61の4(1)-10の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失は、交際費等に該当しないものとする。
 既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。(平7年課法2-7「二十八」により追加)
(注) 「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

会計処理はどうなる?

avatar
小林税理士
「貸倒損失」や売掛金の場合には「売上値引」(又は貸倒損失)の勘定科目で処理することになります。

被災した取引先に対する低利又は無利息融資をした場合

avatar
小林税理士
通常、取引先に対して低利又は無利息による融資をした場合には、「低額による役務提供」又は「無償による役務提供」にあたり、寄付金になる可能性がありますが、復旧支援目的で行われたものについては、寄付金に該当しません。

法人税基本通達9-4-6の3(災害の場合の取引先に対する低利又は無利息による融資)
 法人が、災害を受けた取引先に対して低利又は無利息による融資をした場合において、当該融資が取引先の復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間内に行われたものであるときは、当該融資は正常な取引条件に従って行われたものとする。(平7課法2-7追加)

会計処理はどうする?

avatar
小林税理士
こちらは、普通に低利融資の場合であれば、受取った利息を「受取利息」又は「雑収入など」で処理します。
また、無利息融資の場合には利息は0円なので会計処理は特に何もしません。