前回は、法人税の中間申告についてお伝えいたしました。

その時の記事はこちら

今回は、消費税の中間申告について

納税義務者や納付税額の計算、仮決算の方法などについてお伝えしていきます。

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小林税理士
社長、法人税の中間申告のほかに消費税も中間申告ってなかったでしたっけ?
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社長
用紙が重なってて気づかなかったけど、よく見たら消費税の方も入ってるわ。
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社長
消費税のほうもアレか?
前期の消費税の半分が10万円を超えていたら中間申告するのか?
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小林税理士
いいえ。
消費税の方は消費税で、別個に納税義務の判定や計算方法があるんですよ。
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社長
もう納付書来ちゃってるから、俺の場合納税義務はあるんだろうけど、一応参考のため、教えてくれないか。

対象者は?

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小林税理士
はい。
消費税の場合は、前事業年度の年間の消費税額が48万円を超える事業者の場合には、中間申告が必要となってきます。
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小林税理士
ちなみにこの事業者には、法人だけでなく、個人事業主も含まれます。
個人事業主の場合は、前年の年間の消費税額が48万円を超えるかどうかで判定します。
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社長
48万円かー。
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小林税理士
「48万円を超える」ですよ。
48万円の場合には、中間申告不要です。
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社長
紛らわしいな。
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小林税理士
納付税額の計算は、100円未満切り捨てなので、わかりやすく言えば480,100円以上であれば中間申告が必要になってきます。
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社長
その48万だとか、480,100円だとかって、申告書のどこを見ればいいんだ?
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小林税理士
前事業年度の確定申告書の「⑨差引税額」ってところで判定します。
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社長
ちょっと去年の申告書持ってくるわ。
で、どこだっけ?
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小林税理士
「⑨差引税額」ってところです。
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社長
どこだよ!
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小林税理士
申告書の真ん中あたりです。見つかりました?
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社長
あー、あったあった。
ここが48万か~。
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小林税理士
48万円超です。480,100円。
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社長
細けーこと言うなよ。
でもこれ、去年払った税額と違うような気がするぞ。
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小林税理士
はい。
中間申告義務の判定は、消費税額だけで判定するので、地方消費税額は含まれないんですよー。
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社長
なんだ地方消費税って。そんなもの払った覚えないぞ!
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小林税理士
消費税の申告は、厳密には「消費税」と「地方消費税」というのがあって、申告は一緒にするので一般的にまとめて「消費税」と表現したりするので、地方消費税って知らない方も多いです。
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小林税理士
申告書の真ん中よりチョット上の部分と一番下のところを見てください。
「消費税及び地方消費税の~」って書いてありますよね。
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社長
あ、ホントだ。
知らないうちに地方消費税ってのを払ってたんだなー。
というか、こんなとこまでいちいち見ねーわ。
ここでのポイント

・中間申告義務があるかどうかの判定は、前期(個人の場合は、前年)の消費税確定申告書の「⑨差引税額」が48万円を超える場合は、申告義務あり。

中間申告って1回じゃないの?

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小林税理士
ちなみに今期は、1回だけですか?
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社長
何が?
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小林税理士
中間申告です。
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社長
1回だけじゃないの?
そんなに何回もあるのか?
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小林税理士
ええ。
前期の税額によっては、3回であったり11回であったりするんですよ。
こちらを見てください。
前事業年度(個人の場合は、前年)の
消費税額(申告書「⑨差引税額」
    中間申告の回数
48万円以下申告不要
48万円超年1回
400万円超年3回
4,800万円超年11回
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社長
うちくらい大きい会社になると11回も申告するのか。
大変だな~。
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小林税理士
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社長
無視すんなよ!

納税額は?

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社長
で、納税額はいくらになるんだ?
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社長
あ、これも送られてきた納付書に既に印字されてるわ。
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小林税理士
そうですね。
税務署から送られてきた納付書には、前期の実績に基づいて計算された税額が、既に印字されています。
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小林税理士
ちなみに、計算方法は
年1回の場合は、前事業年度の半分
年3回の場合は、前事業年度の1/4
年11回の場合は、前事業年度の1/12 となります。
端数処理の関係で若干ズレることはあります。

いつまでに申告するの?

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社長
申告期限は、法人税と同じと考えていいんだな。
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小林税理士
年1回の中間申告の場合には、法人税と一緒で事業年度開始から6ヶ月の期間の末日の翌日から2ヶ月以内です。
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社長
要は半年経過した日から2ヶ月な。
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小林税理士
まあ、そんな感じで覚えといてもらえればいいと思います。
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小林税理士
あれ!社長!年11回じゃなかったでしたっけ!?
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社長
白々しいな。
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小林税理士
ちなみに年3回の場合は、3ヶ月に区切った期間の末日の翌日から2ヶ月以内です。
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小林税理士
年11回の場合は、チョット変わっていて
11回のうち、最初の1回めだけは、その課税期間開始の日から2ヶ月を経過した日から2ヶ月以内で、
残りの2~11回は、1ヶ月に区切った期間の末日の翌日から2ヶ月以内です。

みなす規定はあるの?

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社長
あれ、法人税の時は中間申告書の提出がなかったとしても中間申告書の提出があったものとみなすってのが、あったけど消費税にもあるのか?
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小林税理士
ええ、消費税にもあります。

消費税法第44条 中間申告書の提出がない場合の特例
 中間申告書を提出すべき事業者がその中間申告書をその提出期限までに提出しなかつた場合(第42条第11項の規定の適用を受ける場合を除く。) には、その事業者については、その提出期限において、税務署長に同条第1項各号、第4項各号又は第6項各号に掲げる事項を記載した中間申告書の提出があつたものとみなす。

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社長
そこは法人税と一緒だな。
じゃあ、仮決算もあるのか?

仮決算による中間申告

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小林税理士
はい。
中間申告対象期間を課税期間として仮の決算をして申告するということは認められています。

前期実績と仮決算の両方選択可能か?

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社長
でも消費税の場合、3回とか11回とか中間申告があるだろ?
その場合、1度でも仮決算を選択したら全て仮決算でやらなきゃいけないのか?
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小林税理士
そんなことないですよ。
最初の1回目は前期実績で、2回目は仮決算でというようなことも認められています。
これを見てください。

消費税基本通達15-1-2(中間申告における法第42条と第43条の併用)
 法第42条第1項又は第4項《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告》の規定により中間申告書を提出すべき事業者は、一月中間申告対象期間(同条第1項に規定する「一月中間申告対象期間」をいう。以下15-1-9までにおいて同じ。)又は三月中間申告対象期間(同条第4項に規定する「三月中間申告対象期間」をいう。以下15-1-11までにおいて同じ。)の末日の翌日(当該一月中間申告対象期間がその課税期間開始の日以後1月の期間である場合には、当該課税期間開始の日から2月を経過した日)から2月以内(令第76条第3項《国、地方公共団体等の申告期限の特例》又は租特法令第46条の4第1項《個人事業者に係る中間申告等の特例》の規定の適用がある場合には、その規定による期限内)に中間申告書を提出しなければならないのであるが、各中間申告対象期間について、それぞれ法第42条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告》又は法第43条《仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等》の規定のいずれかを適用して中間申告書を提出することができるのであるから留意する。(平15課消1-37、平27課消1-17、平29課消2-5により改正)

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社長
読んでないけど、要は、併用可能ってことだろ?
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小林税理士
はい。

仮決算で還付は受けられるか?

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社長
仮決算で計算したら、税額がマイナスになった場合、還付って受けられるのか?
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小林税理士
還付は受けられないんです。
税額がマイナスになった場合は、0円。
つまり、仮決算で納付する税額が0円となります。
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社長
そうなのか。
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小林税理士
ええ。
なので、早めに還付を受けたい場合には、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」という書類を事前に税務署に提出して課税期間を短縮しておく必要があります。
これについては、またいつかお話させていただきます。

多めに払うことは可能か?

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社長
そういえば、法人税の仮決算では仮決算で計算した法人税額が、前期実績に基づく税額を超える場合には、仮決算はできなかったよな?
消費税でも、同じなのか?
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小林税理士
消費税の場合は、特にそのような規定がないので仮決算の税額のほうが多かったとしても申告できます。

法人税では前期実績、消費税は仮決算は可能か?

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社長
じゃあ、法人税では前期実績に基づく中間申告で、消費税は仮決算の中間申告ってのも可能なのか?
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小林税理士
はい、可能です。
逆に、法人税を仮決算、消費税を前期実績ということも可能です。
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小林税理士
ですので、法人税の仮決算は提出する書類も多く、時間や費用もかかってしまいますが、消費税の仮決算は比較的簡単なので、消費税だけ仮決算ということもよくあります。
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社長
消費税の仮決算の方が簡単なのか。
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小林税理士
日頃からこまめに会計ソフトに取引を入力していることが前提ではありますが。
ここでのポイント

・中間申告が3回又は11回の場合、前期実績と仮決算の併用が可能
・仮決算で税額がマイナスになっても還付は受けられない
・仮決算で計算した税額が、前期実績を上回っても仮決算での申告は可能
・法人税で前期実績、消費税で仮決算ということも可能

消費税特有の中間申告

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社長
でもあれだな。
中間申告の義務がなかった事業者なんかは、逆に1年分まとめて払わなきゃいけないから、それはそれで大変だな。
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小林税理士
そうですね。
でも、消費税には中間申告の義務がなくても任意で中間申告が出来るっていう制度があるんですよ。
(関係法令)
消費税法第42条第6項、第8項、消費税法基本通達15-1-1の2


任意の中間申告書を提出する旨の届出書

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小林税理士
でもこの場合、事前に
「任意の中間申告書を提出する旨の届出書 」という書類を税務署に提出しておかなければなりません。
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小林税理士
そうすれば、前期免税事業者の場合や課税事業者だったけど中間申告の義務がない事業者でも中間申告が出来るようになります。
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社長
じゃあ、この届出書を提出しちゃったら中間申告しなきゃいけないわけだ。ペナルティとかあるのか?
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小林税理士
いえ、中間申告書を提出しないということもできますよ。
ただその場合、任意の中間申告の制度の適用を取りやめる届出があったものとみなされてしまいます。
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小林税理士
消費税の中間申告については、こんな感じですけど参考になりました?
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社長
おう、なったなった。
今回は、税務署から来た納付書で納付しちゃうけど、次からは仮決算も検討してみるよ。ありがとう。

おわりに

消費税の中間申告は、3回や11回申告するということもありますので、その時の資金繰りなどに応じて前期実績で納付するか、仮決算で納付するかということは法人税よりも対応しやすいと思います。

また、今期から課税事業者になった事業者については、任意の中間申告制度も活用できますので、資金繰りによっては活用を検討してみても良いかもしれません。