なんで広告宣伝費が交際費等になるの?

以前、交際費に該当するのかどうかの判断基準として、3つのポイントをご説明させていただきました。そのときの記事はこちら

そして、前回は会議費と交際費等の違いとして会議費の判断基準のご説明をさせていただきました。そのときの記事はこちら

今回は、交際費等に該当する可能性のある広告宣伝費について、ご説明させていただきたいと思います。

「交際費と広告宣伝費じゃ全然かぶるところなんてなくない?」と思う方もいるかも知れません。一般的な感覚からすれば、そう思うのが普通だと思います。

しかし、以前ご説明させていただきましたが交際費等の判断の基準となる3つのポイントは 、①事業に関係がある者などに対し②取引の円滑な進行を図る目的で③接待、慰安、贈答などの行為が行われたかということでした。

だとすると、

例えば、正月明けに得意先に挨拶回りをした際に、何か物品をあげたなんて場合はどうでしょう?

交際費等の判断基準にあてはめれば、事業に関係がある者(取引先)に、取引の円滑な進行を図る目的(挨拶回り)で、物品をあげた(贈答)となると、交際費等に該当してきちゃいそうな気がします。

しかし、この場合でもカレンダーやタオルなどの少額な物品については交際費等には該当しないと規定されています。

このように、交際費等の判断基準だけでは判断に迷いや間違いも生じてしまうので交際費等から除外される経費としてどのようなものがあるかを知ることも必要になってきます。

そこで今回は、交際費等に該当しやすい広告宣伝費についてご説明させていただきます。

交際費等となる広告宣伝費とは?

ポイントは一般消費者

広告宣伝費と交際費等の区分として、租税特別措置法通達では以下のように規定されています。

文章が長いので、読むのが面倒な方は太字と(6)だけ目を通してください。

61の4(1)-9(広告宣伝費と交際費等との区分)
 不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものは広告宣伝費の性質を有するものとし、次のようなものは交際費等に含まれないものとする。(昭52年直法2-33「34」、昭54年直法2-31「十九」、平6年課法2-5「三十一」により改正)
 (1)製造業者又は卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用又は一般消費者を旅行、観劇等に招待するために要する費用
 (2)製造業者又は卸売業者が、金品引換券付販売に伴い、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用
 (3)製造業者又は販売業者が、一定の商品等を購入する一般消費者を旅行、観劇等に招待することをあらかじめ広告宣伝し、その購入した者を旅行、観劇等に招待する場合のその招待のために要する費用
 (4)小売業者が商品の購入をした一般消費者に対し景品を交付するために要する費用
 (5)一般の工場見学者等に製品の試飲、試食をさせる費用(これらの者に対する通常の茶菓等の接待に要する費用を含む。)
 (6)得意先等に対する見本品、試用品の供与に通常要する費用
 (7)製造業者又は卸売業者が、自己の製品又はその取扱商品に関し、これらの者の依頼に基づき、継続的に試用を行った一般消費者又は消費動向調査に協力した一般消費者に対しその謝礼として金品を交付するために通常要する費用
 (注)例えば、医薬品の製造業者(販売業者を含む。以下61の4(1)-9において同じ。)における医師又は病院、化粧品の製造業者における美容業者又は理容業者、建築材料の製造業者における大工、左官等の建築業者、飼料、肥料等の農業用資材の製造業者における農家、機械又は工具の製造業者における鉄工業者等は、いずれもこれらの製造業者にとって一般消費者には当たらない。

上記の通達でわかるとおり一般消費者に対しての金品の贈与や旅行などのサービス提供などは交際費等には該当しないということです。

逆に、上記通達の「一般消費者」を「取引先」「仕入先」「外注先」「従業員」などに入れ替えてみると、なんとなく交際費等にあてはまりそうだとわかるのではないでしょうか。

ポイントは一般消費者です。

次に(6)だけは「得意先等」となっています。

ここでもう一度交際費等の判断基準3つのポイントを確認すると

①事業関係者②円滑な取引が目的③接待、贈答など です。

そうすると(6)は①~③まで3つのポイント全てにあてはまってしまいますが、見本品や試用品などであり、通常要する費用(これがどこまでが通常要する費用になるのかは具体的な基準はありません)については交際費等にはならないということです。

また、他に租税特別措置法施行令で次のように規定しています。太字のところを目を通してください。

第37条の5 (交際費等の範囲)
 法第61条の4第4項第2号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、5000円とする。
 2 法第61条の4第4項第3号に規定する政令で定める費用は、次に掲げる費用とする。
 ◆1 カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
 ◆2 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
 ◆3 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

ここでも、交際費等の判断基準3つのポイントに該当してもカレンダーや手帳などの少額な物品の贈答の場合には、交際費等から除外されて、広告宣伝費となります。

ここまでの説明で重要なところは

①一般消費者に対するもの、②カレンダー等の少額物品、③自社の見本品や試供品 というのがご自身で判断されるときのポイントになるかと思います。

広告宣伝費が交際費等に該当するとどうなる?

中小企業の場合、仮に広告宣伝費だと思っていたら税務上は交際費等に該当してしまったというような場合でも、

原則として資本金1億円以下の中小企業の場合は、

年間800万円までは、交際費等は税務上損金となります。

一般的な中小企業では、年間800万円も交際費と使うという会社は少ないと思いますので、仮に会議費が交際費等に該当してしまっても税務上は影響はないといえます。

資産となってしまう場合もある。

交際費等の話ではないのですが、少額な物品(社名入りカレンダーや社名入りタオルなど)であれば交際費等にならず、広告宣伝費になるとご説明させていただきました。

では、高額な物品の場合はどうなるか。

自社の社名や商品名が入ったもの・・・繰延資産

上記のうち20万円未満のもの・・・支出した事業年度で全額損金算入可能

自社宣伝用でない高額物品・・・交際費等又は寄付金などに該当する

繰延資産に該当してしまうと、償却期間にわたって損金算入されるので支出額全額がその事業年度の損金とはならなくなってしまいます。

また、寄付金になってしまった場合には、所得や資本金等の他の要素によってはほとんど損金算入されないと可能性もあります。

(繰延資産や寄付金の詳しい内容は、後日ご説明する予定です。)

まとめ

今回は、交際費等となる可能性のある広告宣伝費についてご説明させていただきました。

実務では、いろんなケースがあり判断に迷うことがあるかと思いますが、交際費等の判断基準や広告宣伝費の判断基準を覚えておくと良いかと思います。

もう一度確認しますと広告宣伝費の判断基準は ①一般消費者に対するもの、②カレンダー等の少額物品、③自社の見本品や試供品  となります。