所得税

年収850万円超なら要チェック|年末調整で漏れやすい「所得金額調整控除」

(更新 )

年末調整で、意外と控除漏れが多いのが「所得金額調整控除」です。給与の収入が850万円を超え、23歳未満の子どもなどがいる方なら、最大15万円を給与所得から差し引けます。ただ、扶養控除とは対象になる人の範囲が違うため、申告書の記入が漏れやすい控除でもあります。この記事では、対象になる人と控除額の計算方法、漏れを防ぐために会社が確認しておきたいことを解説します。

この記事のポイント

  • 給与の収入が850万円を超え、23歳未満の扶養親族などがいる方は、最大15万円の所得金額調整控除を受けられます。
  • 扶養控除の対象にならない16歳未満の子どもがいる場合も対象です。夫婦の両方が受けることもできます。
  • 年末調整で受けるには、本人からの申告書の提出が必要です。会社から声をかけると、控除漏れを防げます。

所得金額調整控除とは

所得金額調整控除は、給与の収入が多い方のうち、子育てや介護の負担がある方の税金を調整するための控除です。給与の収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」から、さらに一定額を差し引きます。

給与の収入が850万円を超える方は、給与所得控除が上限の195万円で頭打ちになります。そのため、子どもや障害のある家族がいる方には、この控除で負担を和らげる仕組みになっています。

対象になる人

年末調整で所得金額調整控除を受けられるのは、その年の給与の収入が850万円を超える方で、次のどれかにあてはまる方です。

  • 本人が特別障害者である
  • 年齢23歳未満の扶養親族がいる
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる

年齢は、原則としてその年の12月31日時点で判定します。令和8年分なら、平成16年1月2日以後に生まれた方が「23歳未満」にあたります。

扶養控除の対象とは範囲が違う

ここで間違えやすいのが、「扶養親族」の範囲です。扶養控除を受けられるのは16歳以上の扶養親族ですが、所得金額調整控除では、16歳未満の子どもも扶養親族に含まれます。

扶養控除 所得金額調整控除
16歳未満の子ども 対象外 対象
16歳以上23歳未満の子ども 対象 対象
夫婦の両方が受けられるか どちらか一方だけ 両方とも受けられる
社長

子どもは妻の扶養に入れているから、私は関係ないと思っていました。

税理士

扶養控除は夫婦のどちらか一方しか受けられませんが、所得金額調整控除は違います。夫婦の両方の給与の収入が850万円を超えていれば、2人とも受けられます。

控除額の計算方法

控除額は、次の式で計算します。

(給与の収入金額-850万円)×10%

  • 給与の収入金額が1,000万円を超える場合は、1,000万円で計算します。そのため、控除額は最高15万円です。
  • 計算した金額に1円未満の端数があるときは、切り上げます。

計算してみる

次のような場合で計算してみます。

  • 給与の収入金額:950万円
  • 6歳の子どもがいる(扶養控除の対象にはならない)

(950万円-850万円)×10%=10万円

給与所得から10万円が差し引かれます。所得税の税率が20%の方なら、所得税はおよそ2万円(復興特別所得税を含めて2万420円)少なくなります。

給与の収入金額が1,200万円の場合は、1,000万円で計算するので、(1,000万円-850万円)×10%=15万円です。

年末調整で控除漏れが起きやすい理由

所得金額調整控除が漏れやすいのには、いくつか理由があります。

  • 申告書を出さないと受けられない:年末調整で受けるには、「所得金額調整控除申告書」の提出が必要です。基礎控除申告書などと一緒になった用紙なので、欄を見落としがちです。
  • 16歳未満の子どもは扶養控除等申告書の扶養欄に出てこない:扶養控除の対象ではないので、会社のほうでも気づきにくくなります。
  • 配偶者の扶養に入れている子どもでも対象になる:「子どもは配偶者の扶養だから」と、本人が対象外だと思い込んでしまうことがあります。

会社が確認しておきたいこと

  • 850万円を超えるかは、会社の給与だけで判定:年末調整では、扶養控除等申告書を出している会社(主たる給与の支払者)が支払う、年末調整の対象となる給与の総額で判定します。
  • 対象になりそうな方に声をかける:給与の収入が850万円を超えそうな役員・従業員の方には、「23歳未満のお子さんはいますか」と確認しましょう。社長さんご自身も対象になることが多い控除です。
  • 源泉徴収簿への記入:控除額は、年末調整の対象となる給与の総額を出したあとで計算します。対象者には、あらかじめ源泉徴収簿に印をつけておくと便利です。

年末調整で漏れてしまった場合でも、年末調整をやり直すか、本人が確定申告(還付申告)をすれば、控除を受けられます。

なお、給与と公的年金の両方がある方向けの所得金額調整控除もありますが、こちらは年末調整では受けられず、確定申告で受けることになります。

令和8年分の年末調整で変わった点は、「令和8年分の年末調整、去年と変わった4つのポイント」で解説しています。役員報酬の手取りは、当事務所の「役員報酬 手取り計算シミュレーター」で計算できます。

所得金額調整控除は、申告書に記入するだけで受けられる控除です。対象になるかどうか迷うときは、お気軽にご相談ください。

※記事の内容は、更新日時点の法令にもとづいています。実際の判断は、個別の状況によって変わることがあります。