売ってないのに譲渡所得となる

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小林税理士
権利金を受け取ったら、不動産所得でなく譲渡所得となる可能性があるのは、借地権等の設定の対価として権利金を受け取るような場合です。
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社長
いまいち、よくわからん。
何で貸してるだけなのに売ってることにされてしまうんだ?
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小林税理士
それでは、土地の価値って何があると思いますか?
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社長
何を急にわけのわからんことを。
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小林税理士
土地には、その土地に自分の家を建てて住むという利用価値がありますよね?
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社長
当然だろ。
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小林税理士
他には、その土地を自由に売却できるという価値やその土地を自由に貸すことができるという価値もあります。
まとめると。
土地の価値

・自分でそこに住む
・売却する
・貸し付ける

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小林税理士
更地の土地の場合には、上記3つの価値があるわけですが、借地権を設定したらどうなります?
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社長
借地権って?
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小林税理士
一言で説明すると、その土地を利用する権利です。
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社長
ザックリすぎてよくわからんw
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小林税理士
借地権があると、借主がそこに自分の家を建てて住むことやアパートなどを建てて人に貸すことや借地権そのものを人に売ることなんかもできます。
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社長
土地の所有者と同じような権利があるのか。
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小林税理士
ええ、ということはその土地の所有者である貸主は
・自分の家をその土地に建てられなくなる。
・自分でその土地にアパートを建てて貸せなくなる。
・その土地を売却することは出来るが、大きく価値が減少しているため売りづらくなる。
ということになります。
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社長
それだと借地権がある借主に、土地の価値を奪われたようなものじゃないか。
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小林税理士
そうですね。
なので実際には売却していなくても、土地の価値の大部分は借主に移ってしまうので、税務では「譲渡したものとみなす」という扱いにしているんです。
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社長
なるほど。

借地権の設定=譲渡所得ではない

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小林税理士
ただ、借地権の設定として権利金を受け取ったとしても必ずしも譲渡所得となるわけではないんです。
譲渡所得となる場合

・借地権の設定により権利金を受け取ったこと
・権利金の額 > その土地の更地の価額×1/2
(上記は建物等の全部の所有を目的とする場合。一部の所有を目的とする場合には、土地の価額を床面積で按分する)

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小林税理士
簡単に説明すると、受取った権利金の金額が、その貸付けた土地の更地価額の1/2を超えている場合は、譲渡所得になります。
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社長
1/2以下の場合は、どうなる?
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小林税理士
その場合には、原則的な取り扱いにもどって、不動産所得となります。
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小林税理士
この場合、臨時所得に該当するか確認する必要があります。

まとめ

権利金を受け取った場合

・原則は、不動産所得として収入計上する。
・不動産所得の場合、臨時所得に該当するか確認する。
・権利金の金額が、借地権の設定として受け取ったものであり、その土地の更地価額の1/2を超える場合には譲渡所得となる。

参考

所得税法施行令第79条 (資産の譲渡とみなされる行為) 
 法第33条第1項(譲渡所得) に規定する政令で定める行為は、建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権(以下この条において「借地権」という。) 又は地役権(特別高圧架空電線の架設、特別高圧地中電線若しくはガス事業法第2条第12項(定義) に規定するガス事業者が供給する高圧のガスを通ずる導管の敷設、飛行場の設置、懸垂式鉄道若しくは跨こ 座式鉄道の敷設又は砂防法(明治30年法律第29号) 第1条(定義) に規定する砂防設備である導流堤その他財務省令で定めるこれに類するもの(第1号において「導流堤等」という。) の設置、都市計画法(昭和43年法律第100号) 第4条第14項(定義) に規定する公共施設の設置若しくは同法第8条第1項第4号(地域地区) の特定街区内における建築物の建築のために設定されたもので、建造物の設置を制限するものに限る。以下この条において同じ。) の設定(借地権に係る土地の転貸その他他人に当該土地を使用させる行為を含む。以下この条において同じ。) のうち、その対価として支払を受ける金額が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額の十分の5に相当する金額を超えるものとする。
 ◆1 当該設定が建物若しくは構築物の全部の所有を目的とする借地権又は地役権の設定である場合(第3号に掲げる場合を除く。)  その土地(借地権者にあつては、借地権。次号において同じ。) の価額(当該設定が、地下若しくは空間について上下の範囲を定めた借地権若しくは地役権の設定である場合又は導流堤等若しくは河川法(昭和39年法律第167号) 第6条第1項第3号(河川区域) に規定する遊水地その他財務省令で定めるこれに類するものの設置を目的とした地役権の設定である場合には、当該価額の2分の1に相当する金額) 
 ◆2 当該設定が建物又は構築物の一部の所有を目的とする借地権の設定である場合 その土地の価額に、その建物又は構築物の床面積(当該対価の額が、当該建物又は構築物の階その他利用の効用の異なる部分ごとにその異なる効用に係る適正な割合を勘案して算定されているときは、当該割合による調整後の床面積。以下この号において同じ。) のうちに当該借地権に係る建物又は構築物の一部の床面積の占める割合を乗じて計算した金額
 ◆3 当該設定が施設又は工作物(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(平成12年法律第87号) 第16条(使用の認可の要件) の規定により使用の認可を受けた事業(以下この号において「認可事業」という。) と一体的に施行される事業として当該認可事業に係る同法第14条第2項第2号(使用認可申請書) の事業計画書に記載されたものにより設置されるもののうち財務省令で定めるものに限る。) の全部の所有を目的とする地下について上下の範囲を定めた借地権の設定である場合 その土地(借地権者にあつては、借地権) の価額の2分の1に相当する金額に、その土地(借地権者にあつては、借地権に係る土地) における地表から同法第2条第1項各号(定義) に掲げる深さのうちいずれか深い方の深さ(以下この号において「大深度」という。) までの距離のうちに当該借地権の設定される範囲のうち最も浅い部分の深さから当該大深度(当該借地権の設定される範囲より深い地下であつて当該大深度よりも浅い地下において既に地下について上下の範囲を定めた他の借地権が設定されている場合には、当該他の借地権の範囲のうち最も浅い部分の深さ) までの距離の占める割合を乗じて計算した金額
 2 借地権に係る土地を他人に使用させる場合において、その土地の使用により、その使用の直前におけるその土地の利用状況に比し、その土地の所有者及びその借地権者がともにその土地の利用を制限されることとなるときは、これらの者については、これらの者が使用の対価として支払を受ける金額の合計額を前項に規定する支払を受ける金額とみなして、同項の規定を適用する。
 3 第1項の規定の適用については、借地権又は地役権の設定の対価として支払を受ける金額が当該設定により支払を受ける地代の年額の20倍に相当する金額以下である場合には、当該設定は、同項の行為に該当しないものと推定する。