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小林税理士
前回は、税務上(法人税)でいうところの寄付金とはどんなものなのかについて簡単にお話させていただきました。
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小林税理士
今回は、前回お話した資産の贈与についてもう少し踏み込んでお話させていただきます。

今回のお話の前提

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小林税理士
これからお伝えする取引については、事業とは直接関係のない相手に対して行った場合を前提としています。
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小林税理士
ですので、取引先や従業員などに対して行った場合に関しては、交際費になったり、給与になったりしますが、こちらに関しましては、また後日お話させていただきます。

金銭以外の資産の贈与の場合

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小林税理士
前回もちょっと触れましたが、金銭以外のモノを贈与したりしても寄付金になります。
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小林税理士
この場合、現金と違ってモノのなので寄付金の計上額は、贈与した資産の時価で計上することになります。
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社長
意味がよくわからないんだが・・・
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小林税理士
土地を寄付した場合を考えてみます。

例)土地を寄付した場合

土地の帳簿価格 1,000万円

土地の時価   3,000万円

税務上の考え方

(借方)寄付金 3,000万円/(貸方)土地 1,000万円

            (貸方)譲渡益2,000万円

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社長
何だこの「譲渡益2,000万円」って?
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小林税理士
ここがわかりづらいところなんですけど、さっき寄付金は資産の時価、ここでいう土地の時価を寄付金の金額としますとお伝えいたしましたよね。
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小林税理士
税務上の考え方では、一旦その土地を寄付の相手方に時価の3,000万円で売って、その売却代金を寄付したと考えるんです。

土地を3,000万円で売却

(借方)現金 3,000万円/(貸方)土地 1,000万円

           (貸方)譲渡益2,000万円

土地を売却後、売却代金を寄付

(借方)寄付金 3,000万円/(貸方)現金 3,000万円

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社長
でも、3,000万円なんて現金、会社は手にしてないんだぞ。
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小林税理士
実際に売却しているかどうかにかかわらず、譲渡したものとみなされるんです。
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社長
勝手にみなすなよ!
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小林税理士
勝手にって。。。法律でそうなっているんですよ。
前回の条文をもう一度確認してみましょうか。

法人税法 第37条 (寄附金の損金不算入)

1~6項省略

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。) をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

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小林税理士
上記条文の「 金銭以外の資産のその贈与の時における価額 」つまり、時価で計上するものと規定していますのでこうゆう考え方になってしまうんです。
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社長
でも、普通の社長は寄付したら売却したことになるなんて考えないぞ!
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小林税理士
そうなんですよね。そのへんの税務と一般的な人の考え方のズレが、後でトラブルの原因になったりするんですよね。
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社長
トラブルって?

寄付した側が課税される

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小林税理士
前回、寄付金は損金に出来る限度額があって、ここでは詳しく述べませんが、寄付の相手先によってはほとんど損金にならないことがあるということをお話しました。
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小林税理士
さっきの土地の寄付を例にとってみると

寄付金の額 3,000万円

上記のうち損金に算入出来る限度額は100万円となった場合

譲渡益2,000万円は全額、益金に算入される

寄付金は3,000万円のうち100万円のに損金算入される とすると

税務上の(寄付金の取引に関しての)所得は

2,000万円-100万円=1,900万円(課税所得)

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社長
つまり、譲渡益のほうは丸々課税の対象となって、反対に寄付金の方は限度額があってほとんど損金にならないから
寄付したら、寄付した側に税金が来ちゃうってことか?
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小林税理士
そうゆうことになります。
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社長
こんなの普通わかるかよ!
あげた方に課税がくるなんて普通思わないからな。
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小林税理士
そうですよね。
税務上の寄付金の範囲って物凄く広いので、中小企業の社長さんも考え方やどんな取引が寄付金になりやすいかってことは知っておいたほうがいいですね。

寄付の認識のない取引

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小林税理士
現金の寄付や資産の贈与による寄付は、会社の側に寄付という認識があるからまだトラブルは少ないかと思いますけど、寄付という認識がなく行った取引が、寄付金になってしまうのが一番怖いですね。
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社長
寄付していないのに寄付になるとか、
売却していないのに売却したものとみなすとか、
もうわけがわからんな。
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小林税理士
次回以降ご説明いたしますが、
例えば下記のようなものがあります。
ほかにもこんな取引に注意

・資産の低額譲渡
・資産の低額貸付
・無償の役務提供
・低額の役務提供
・資産の高価買入れ
・資産の高額借入れ
・高額の役務の支払い
・債権放棄、債務免除
・債務の無償引受      など

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社長
ザッと読んだだけでは何のことだかわからないが、これらに該当すると寄付金になる可能性があるんだな?
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小林税理士
はい。ではまた次回。